2024/11/13 05:00
「おひとりさま」の効用~ポジティブな孤独
この時期、ストレスチェックを行う企業が増え、組織状況の分析を見る機会も多くなります。
その中で、経理業務など、いわゆる内勤で、座りっ放しの作業をする職務の人が多い組織では、環境要因としてのストレスが大きい傾向にあり、気になることがあります。
電話のオペレーターも座りっ放しの仕事【時事通信社】(本文と直接関係はありません)
◆残業が多くなくても
産業医の面談をしていて気が付くのですが、残業時間がそれほど多くなくても、精神的疲労度が高いのは、経理などで1日中、座位で作業をする場合です。
営業職やその他、外で仕事をする人の場合は、「こんなに残業が多くて大丈夫かな」と、心配するような残業時間の数字でも、精神的な健康が比較的、保たれていることがあります。
もちろん、個人のストレス耐性や職場のコミュニケーションなど、その他の要因も関係します。それでも、座りっ放しが心の健康に関わることは最近、注目されています。
中程度以上の運動をするなど、座りっ放しの状態で過ごす時間を減らすことが、うつ状態の緩和に役立つとの研究結果が、2010年から14年にかけて、相次いで報告されています。
◆暮れにかけて要注意
心の健康には、テレビの視聴時間や、パソコンの利用時間が影響することも、報告されています。こうした座りっ放しの状態が、問題といえそうです。
座りっ放しの時間が短いほど、抑うつ度が低下し、精神的に健康度が高いとされています。生活の中で、いかに座りっ放しを改善するかが、うつ予防に大事なポイントといえるでしょう。
ですから、残業時間などを調べて、単に数字だけを見て「このくらいなら大丈夫だろう」と考えるのは、問題があります。
暮れにかけて、決算や年末調整の経理処理などが重なり、体調を崩す人が増えます。パソコン作業をしていて、気が付かないうちに時間が過ぎていた、と感じる人も多いと思います。こういう状況が継続するときは要注意です。
◆工夫する企業も
ただ、経理中心の業務を行っていても、心の健康状態が良好だと感じる企業もあります。私が関わっている企業にもあります。そうした企業は、どんな工夫をしているのか。具体的な事例を以下にまとめてみました。
(1)1日に何度か身体を動かす
朝の始業時間の前にラジオ体操の音楽を流す。自由参加で身体を動かしたい人は、自分なりにストレッチをする。ラジオ体操をしない人でも、その時間はかなり自由に伸びをしたりして、身体を動かす機会をつくることができる。強制的ではなく、あくまで始業前に深呼吸をしたり、体を伸ばしたり、緩めたりすることを目的にしている。
(2)健康・運動イベントを頻繁に企画
健康イベントというと堅い感じがするが、「あくまで楽しく興味を持って」参加できるような企画を定期的に行っている。参加したくなるようなイベントが、昼休みなどに行われている。例えば、「自分の身体の柔軟度年齢」などの測定をする企画は、参加者も多く、盛り上がっていた。こうしたイベントは、身体を動かすだけでなく、社内コミュニケーションの改善にも、役立っていると思われる。押し付けでなく、自発的に参加できることが大事。
(3)健康・運動イベントの企画を社内で募る
こうしたイベントの企画を社内で募集している。選ばれた企画の応募者と総務が一緒にイベントを実行することで、さらにコミュニケーションの輪が広がる。
(4)目標達成をゲーム感覚で楽しむ
身体を動かすことに関して、自分なりの目標をつくる。目標はあくまで自由で、例えば、週2回ジムに行く、1日4000歩を歩く、毎朝ストレッチをする、階段を毎日3階まで歩くなど。小さな目標でいいので、それを自己申告し、8割ほど達成できた場合、賞品が出るというイベント。秋は10月から12月末まで、3カ月間の目標などとしている。賞品は高額なものではなく、あくまで自分の身体活動を増やすことに目を向けることが目的。
写真はイメージです【時事通信社】
◆1時間に1回くらいは
身体を緩めると、気分は変わります。デスクワークが続く仕事の人は、1時間に1回くらいは、立ち上がって伸びをしたり、体をひねったり、首を回したりしましょう。
こうして身体を動かすことを「さぼっている」「集中していない」と、とらえる風潮は危険です。
デスクワーク中心の職場は、午前と午後にそれぞれ、時間を決めてストレッチタイムをつくるくらいのことは、してほしいとも思います。
私は、社内にストレッチ用のヨガベルトなどを置いて、自由に使えるようにすることなども提案しています。
寒くなると、閉じこもりがちになります。デスクワークの多い人は、せめて昼休みは身体を動かしてほしいと思います。
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