Dr.純子のメディカルサロン

部下との関係に悩む人たちへ
~相談事例に共通する傾向とは~ 第43回

 上司のパワハラ的な発言や態度で悩む部下がいる一方で、「部下が怖い」「部下がストレスになっている」と言う上司もいます。

 「部下がストレス」という相談を受けていると、そこには、いくつかの傾向があることに気付きます。

 ケース1:キャリアの長い部下

 50代のA氏は企業の部長で、部下のB子さん以外とは極めて良好なコミュニケーションを取り、仕事を進めている。

 B子さんは、A氏と同年代の女性。職歴も長く、他部署に所属した経験もあり、A氏の上司に当たる常務などとも顔見知りで、態度が大きい。

 B子さんの仕事に問題があり、注意しなければいけないと思いつつ、注意するとパワハラと言われそうで、怖くて注意できないでいる。

より深刻な事例も顕在化している。写真は自殺した静岡市職員(50代男性)の手帳。部下からのパワハラを訴える記述がある。遺族は市に損害賠償を求める訴訟を起こした=2020年1月10日撮影(一部画像を処理しています)【時事通信社】

 以前、軽く仕事の指摘をしたところ、思いがけない反応があり、以来、怖くて当たり障りがないようにしている。

 しかし、周囲からもB子さんの問題点を何とかしてほしいと言われ、管理職としての責任を感じ、会社に行くのがうんざりする気分でストレスになっている。


 ケース2:若い社員への注意

 40代のAさんは商社の課長。入社2年目の部下が多いのだが、彼らがストレスの原因になっている。

 1年目は新入社員ということで、ある程度、仕事の内容を大目に見ていた。今は2年目で、自立してほしい部分があるが、自覚が足りないようで、期待通りできない部下が数人いる。

 以前、少し厳しく注意したら、1人の社員が適応障害で休職した。以来、怖くて注意できないでいる。

 注意できないことと、仕事が思うように進まないストレスで、最近はアルコールの量が増えている。

 ◇どうすればいいか

 部下に注意するのが怖いという場合、その不安の要因は、逆切れされたり、パワハラと言われたりすることへの恐れといえるでしょう。

 ケース2のように、注意したことで相手が精神的に落ち込み、病気になった場合は、管理職として責任を感じることもあります。

 しかし、仕事に問題がある部下に注意をしなければ、仕事は進みません。仕事が進まないことで、自分にもストレスがかかります。

 注意できないストレスと、仕事が進まないストレスの二重のストレス構造は避けなければなりません。

 そこで不可欠なのが、問題点のエビデンス(事実)をかき出し、その事実のみをきちんと伝え、ここに感情的な発言を入れないことです。

 ただ、人は注意をしないで長い期間、我慢していると、どうしても感情的な言葉が入ってしまうのです。

 例えば、「今まで我慢してきたが、見るに見かねて注意するんだ」「君のためを思って注意するんだ」「期待しているから注意するんだ」といった言い方は全て、上司の感情が入っています。

 ◇上司から声掛け

 気が付いたときに事実だけ、その都度、注意していれば、こうした感情的な発言はしなくて済みますし、すっきり相手に伝わるはずです。

 また、問題点を指摘することは業務上、必要なことですから、不要な遠慮はしない方がすっきりします。

 問題を伝える際に、会話を早口や大声にしない、一度注意する内容を整理してから話すなどしていれば、いいと思います。

 また、問題点だけを注意するのではなく、部下がいい仕事をしたときはその事実を評価するようにしていれば、「この上司は、いいときはいい、悪いときには注意をする人だ」と認識してくれるはずです。

 一方、入社間もない社員は指摘されること自体に慣れていないことが多いのです。

 高校、大学と褒められることで進んできた場合が多く、問題点を指摘されること自体で落ち込むことも多いので、そのことに気がつきつつ、事実を伝えることが必要でしょう。

 若手社員に対しても「そのくらいやって当たり前」とせず、いい仕事をしているときは褒めるというようにすると、受け入れてもらいやすくなります。

 部下のメンタルが心配という場合は、時々、声掛けをして、コミュニケーションを取ることも心掛けておいてほしいと思います。

 上司からの声掛けは、若手社員にとっては、モチベーションを高める要素になります。

(文 海原純子)

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