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妊娠の確率を左右し、生理痛などの生活上の問題も生じさせる月経。その周期や出血量などは女性の健康状態に大きく左右される。日本産婦人科学会は1962年に当時のデータを基に「正常月経の周期(間隔)」を25~38日と定義し、それより短い事例は「頻発月経」、長い事例を「稀発(きはつ)月経」としている。しかし、国立成育医療研究センターがスマートフォンアプリを使った女性向けの健康情報サービスに寄せられた匿名データを解析したところ、年齢によって異なる傾向を示していることが分かった。
年齢によってばらつきが異なる月経周期=国立成育医療研究センター提供
この調査を基に同センターは今後、同意を得たサービス利用者を対象に生活習慣や就労状況、家庭環境などについてのアンケートを6回実施し、女性を取り巻く社会的な環境が月経周期に与える影響も調査していく方針だ。
◇32万人を調査
今回分析されたのは、健康情報サービス「ルナルナ」のユーザー32万人の年齢や月経周期、体温、都道府県ごとの居住地情報などだ。匿名化した上で、季節や居住地、年齢と月経周期の関連を分析した。
分析を担当した同センター基礎内分泌研究室の鳴海覚志室長は「季節や居住地によって周期の違いは認められなかったが、年齢ごとの周期については、幾つかの変化が認められた」と話す。
鳴海覚志室長
変化の一つは15歳から19歳で正常周期より短い人が12.9%、長い人が10.1%だった。これに対して20歳から24歳のグループでは、それぞれ7.1%と10.7%、25歳から29歳ではそれぞれ5.0%と9.0%と減少していく。
このことから、肉体的な成熟につれて月経の平均周期が長くなる傾向があることが分かった。鳴海室長は「10代の非正常月経のうち、頻発月経は成長につれて正常化が期待できる」と分析している。
◇20代後半~40代前半、月経周期短縮
もう一つ注目したい点は20代後半から40代前半にかけて月経周期が3日短くなり、その後加齢に連れて長くなっていた。同室長は「これまで40代後半から周期が長くなると考えられていたが、今回の調査では、周期は一度短くなってから長くなっていくと推測される。同じ日数でも年齢に応じて異なる評価ができると考えられる」と総括。「正常月経周期」の定義自体についての議論が必要だと指摘している。
仕事内容や飲酒が影響するか調査中=国立成育医療研究センター提供
一方、今後実施する調査は、女性の就業率の上昇や雇用、生活スタイルの多様化が進む中、心理的なストレスや社会経済的状況が月経不順や妊娠率などに影響を与えているかどうかを調べることが主目的だ。
このため、妊娠を希望している人とそうでない人に分けて、同サービス利用者の中から参加者を募り、基礎体温や月経周期などに加えて、睡眠時間や心理状態、就労形態、通勤時間、飲酒や喫煙習慣の有無などをアンケート形式で質問し、情報を匿名化した上で分析する。
三瓶舞起子研究員
◇メンタル面もカバー
今後の調査を担当する同センター社会医学研究部の三瓶舞紀子さんは、社会的な問題やメンタル面での不調が月経周期や妊娠率に影響を与えているという指摘もあるが研究は進んでいない、と調査の狙いを説明している。
その上で「2020年1月後半から3月に参加者を募集し、21年1月までに6回程度のアプリ上でのアンケートを実施する計画だ。アンケートは15分程度で回答できるものなので、できるだけ多くの人に参加してもらいたい」と呼びかけていた。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2020/02/17 07:00)
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