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良医の育成に全力
医学教育システムに定評―兵庫医科大学

 神戸市と大阪市の中間、兵庫県西宮市に位置する兵庫医科大学は1972年、精神科医の森村茂樹博士によって創立された私立医科大学である。学生が早くから医療現場で患者と接する機会を設け、全国に先駆けて臨床実技の到達度実習試験を実施するなど、独自の教育システムには定評がある。徹底したサポート体制が功を奏し、医師国家試験の合格率も常に上位を維持している。野口光一学長は「良い医療を続けていくためには、医師になってからも自らを高めるための努力が必要。コツコツと学ぶ姿勢を6年間で身に付けてほしい」と話す。

インタビューに応える野口光一学長

 ◇高い国試合格率

 「医育機関である以上、良い医師を育てること、そして医師国家試験の合格は不可欠です」と野口光一学長。過去には合格率が全国順位で下位だった時期もあったが、教職員が一丸となって国試対策に取り組んだ結果、今年は新卒が97.3%、既卒は100%を達成した。

 「合格率が上がったことで、何より学生や教職員たちが色々な点で大学に対する自信と信頼感を持てるようになったことが非常に大きかったですね」

 医学教育センターに4人の専任教員を配置して、学習をサポートするなど、さまざまな対策を講じてきた。特に結果に結び付いているのが、独自に作成する総合試験問題だという。

 「医師国試よりやや難易度の高い卒業試験を実施し、それをクリアすれば医師国試も高い確率で合格できるという流れをつくりました。過去問は一切使わずにすべてオリジナルで出題していますので、臨床教員の負担はかなり大きいですが、成果に直結することが判りましたので、皆熱心に取り組んでくれています」

 英国の教育専門誌が発表した「THE世界大学ランキング日本版2020」で、同大学は「教育リソース」部門で国内6位、私立大学では1位にランクイン。同ランキングによると、「教育リソース」は、学生一人あたりの資金や教員比率などのデータから、どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを表している。教育充実度、教育成果、国際性を含めた総合順位は国内121-130位だった。

兵庫医科大学

 ◇モチベーションを刺激

 医学部に入学した途端、学ぶ意欲を失ってしまう学生が一定数いるというのは、どの医学部も頭を抱える問題だ。兵庫医大では、医師を目指すモチベーションを刺激するため、1年生の早い段階でできるだけ医療や介護の現場に触れる機会を設けている。

 「大学病院の臨床現場や近隣の在宅ケアの見学に行ったり、OBの開業医に話を聞きに行ったりして、『早く自分もこういう医師になりたい』と思えるようなきっかけを作っています」

 また、「エスコート実習」では新規の患者に付き添い、初診から検査も含めて丸1日を共に過ごす。一緒に病院内を回ることで、いろんな部署でさまざまなスタッフが働いていることも実感できる貴重な実習だ。患者から『なぜ医学生になったの?』などと質問されたり、『良いお医者さんになってね』と励まされたりして、医師を目指す気持ちを新たにする学生も多いそうだ。

 「のんびりしていて優しい学生が多いので、患者さんからは人気がありますが、自らの実力を高めるという良い意味でのハングリー精神がない学生がいる。チャンスがあったら自分の活躍の場を広げることに貪欲になってほしい」

 ◇チーム医療演習

 2007年には、兵庫医大と同じ法人内に「看護学部」「薬学部」「リハビリテーション学部」を持つ兵庫医療大学を創設。医学生が多職種連携を学ぶための環境を整えた。

 「チーム医療演習には医学部の3年生と、看護、薬学、リハビリの4年生が一つのグループとして参加します。医学部の学生は、国家試験を目前に控えた他学部の学生に知識量で負けることがあり、それが勉学に対する良い刺激にもなります。チーム医療の学びだけではなく、医学の勉強に対するモチベーションが高まるきっかけにもなっています」

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