医学トップの視座

良医の育成に全力
医学教育システムに定評―兵庫医科大学

 教育カリキュラムは、グループ学習を積極的に取り入れて、能動的に学べるよう配慮している。数人単位で臨床上の課題をディスカッションするチーム・ベイスド・ラーニング(TBL)は、いかにチームに貢献できたかを学生同士が評価し合う仕組みになっているため、座学ではなかなか経験することのできない効果的な学びの機会になるという。

創立者の森村茂樹博士

 米国から医師を招いて行う「臨床推論」の授業は、完全に英語だけで臨床上の課題についてディスカッションしていく。

 「授業の様子をみると、学生が非常に積極的に参加していて、びっくりします。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開講できませんが、ぜひ再開して続けていきたい」

 ◇教育改革を先取り

 全国の医学部の学生は、2005年から臨床実習に入る前に、医学部共用試験としてCBT(知識・問題解決能力を見る試験)とOSCE(客観的臨床能力試験)に合格し、全国医学部長病院長会議からスチューデントドクターとして認められることが義務付けられている。

 これに加えて、6年生で態度や技能を評価する「Post-CC OSCE(臨床実習後OSCE)」を次年度から正式に導入することが決まっている。

 「問診の試験をするには模擬患者さんが必要になりますし、あらためて導入するのは大変な労力や体制整備が必要ですが、本学ではすでに10年ほど前から同じような形でアドバンスドOSCEを行っていますから、問題なく導入できると思います」

 ◇定着率の高い地域枠

 医師不足の解消に向けて、何らかの形で地域枠を設ける医学部が多い中、兵庫医大では開学当初から、卒業後に兵庫県内で医師として働くことを条件に兵庫県が学費と奨学金を給付する「兵庫医科大学兵庫県推薦入学制度」を設けている。

 「この制度は40数年の歴史を持つ地域枠制度。しかも高い地域定着率を誇っており、医師が少ない県北部の地域医療に大きく貢献しています」

 ◇痛みの研究でトップに

 2016年、10代目の学長に就任した野口氏は、京都大学工学部を卒業後、大阪大学医学部に学士入学したという経歴の持ち主。身内に医療関係者は一人もおらず、理系に進んだのも野口氏だけだという。

インタビューに応える野口光一学長

 「原子力関連のエンジニアを目指して大学に進学し、朝永振一郎先生の弟子の教授の教室で中性子論の研究をしていたのですが、いざ就職を考えると、あまり選択肢がなかったんです」

 進路について悩んでいるときに、阪大医学部が4年前に始めた学士入学制度を知り受験、合格した。卒業後は臨床医になるつもりで整形外科に入局、関連病院で3年働いた後、基礎医学の大学院へ。学位取得後、再び整形外科医として働くつもりだったが、基礎研究の魅力に引き込まれ、そのまま研究生活を続けることになった。

 米国立保健研究所(NIH)に留学中、世界で活躍する痛み研究の科学者たちと知り合ったことが大きな刺激と自信になり、帰国後和歌山県立医科大学を経て、37歳の若さで兵庫医大の教授として赴任し、痛みを分子レベルで解明する疼痛基礎研究の第一人者に。

 「動物に対して痛み刺激を与えると、脊髄神経節の遺伝子発現が変わるというデータを1987年に北米脳神経学会で発表しました。論文でしか知らない英国の有名な先生がポスターを見に来てくれて、ディスカッションし褒めてもらった時に感じた、震えるような喜びを今でも覚えています」

 ◇生涯学び続ける医師に

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3月に予定していた卒業式は残念ながら中止になった。そこで、学長は卒業証書に添えてメッセージを送った。

 「医学・医療の世界では、その学びに集中できる職業人としての青春の時間は案外短いものです。研修医時代にも、そしてそれ以後も、前向きの努力をぜひ継続して下さい」

【兵庫医科大学 沿革】
1972年 兵庫医科大学開学
  73年 病院棟完成
  78年 兵庫医科大学大学院開設
  80年 救命救急センター設置
  97年 兵庫医科大学篠山病院開設
2007年 兵庫医療大学開学
2013年 急性医療総合センター開設
  18年 教育研究棟完成

  • 1
  • 2

医学トップの視座

横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会