治療・予防

知っておきたいリスク
~タトゥーと除去治療(近畿大病院 大塚篤司主任教授)~

 若者を中心にファッションの一つとして人気のタトゥー。しかし、さまざまな健康リスクがあることを、入れる前に知っておきたい。タトゥーの除去治療(広範囲でないワンポイント)を行う、近畿大病院(大阪府大阪狭山市)皮膚科の大塚篤司主任教授に話を聞いた。

リスクを説明できる施術者を選ぶ

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 ◇針やインクによる影響

 タトゥーは、注射針を皮膚の深い部分(真皮)に刺し、色素(インク)を注入する。皮膚には常在菌によるバリア機能があり、乾燥や外的刺激、紫外線などから生体を防御している。針を刺すことでバリア機能が破壊され、皮膚炎などを引き起こすリスクがあるという。

 「まず、針に付着した細菌やウイルスなどによるB型肝炎やC型肝炎などの感染症が考えられます。針を使い回していれば、リスクは増します」と大塚主任教授。

 色素に使われる成分は精製水やグリセリンといった液体の他、水に溶けにくい顔料などで構成される。顔料にはカーボンや金属などが使われており、それらにアレルギー反応を示すケースもあるという。特に赤色にはカドミウムや硫化水銀などが用いられているものがあり、「有害反応を引き起こしやすいといわれています」。

 皮膚トラブルはタトゥーによる合併症とされ、「一般に施術後数日から1週間以内に見られますが、色素が体内で分解されにくいため、長期的な影響も懸念されます」。

 ◇完全には消せない

 皮膚トラブルが見られたら、すぐに皮膚科を受診したい。トラブルがない場合でも、医療機関を受診する際には注意が必要だ。例えば、強力な磁場や電磁波が発生するMRI検査では色素の金属成分が反応して、皮膚に痛みや熱を感じたり、やけどに至ったりする危険も伴うためだ。

 一方、タトゥーを消したい人は、近畿大学病院も含め、レーザーなどによるタトゥー除去を行う医療機関に相談することになる。「ただし、レーザー治療によるやけどなどのリスクもありますし、一度入れたタトゥーは完全に消すことはできません」。体質によっては、タトゥーの施術時にケロイドが形成されてしまったり、除去治療でケロイド状になったりする場合もある。

 「医師の立場から、タトゥーを入れることはお勧めしません。入れるのであれば、健康リスクがあることをきちんと理解し、それらを説明できる施術者(彫師)に入れてもらうようにしましょう」と、大塚主任教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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