治療・予防

肉料理は加熱
~カンピロバクター食中毒(信愛クリニック 井出広幸理事長)~

 一年を通して注意が必要な、カンピロバクターによる食中毒。鶏、牛、豚などの腸管内に生息する細菌で、食用に解体される段階で汚染が広まるとされる。消化器内科医で信愛クリニック(神奈川県鎌倉市)の井出広幸理事長に聞いた。

調理器具の汚染にも注意

調理器具の汚染にも注意

 ◇鶏肉の多くが汚染

 厚生労働省の調査によると、2023年までの過去18年間でカンピロバクターによる死亡者は確認されていないが、毎年平均2000人程度の患者が報告されている。特に鶏肉での汚染が多く、市販されている鶏レバーの7割、鶏肉の10割でカンピロバクターが検出されたとの報告もある。レバーやささみなどの刺し身、たたきなどの半生または加熱不十分な食品は特に要注意だ。

 「ノロウイルスのように人の吐いた物から他人に感染することはまれで、あくまで菌に汚染された肉を食べることで症状が引き起こされます」と井出理事長。

 数百個程度の少量の菌を口にしただけで感染する。主な症状は腹痛、下痢嘔吐(おうと)、発熱、悪心(おしん)、倦怠(けんたい)感など。潜伏期間は1~7日だが、「3日以内くらいに発症する人が多いです」。

 ごくまれに、数週間経過して手足のしびれなどのギラン・バレー症候群に至るケースもあるが、「通常は自然に軽快します」。牛乳については「日本では加熱処理されているので問題ないでしょう」。

 ◇調理器具にも要注意

 症状が強いとき、最も大切なポイントは〔1〕水分と塩分の補給〔2〕固形物は避ける―の2点だという。「下痢嘔吐で脱水症状に陥るのを防ぐために、水分と塩分を補給しましょう。無理しておかゆなどを食べる必要はないので、胃腸を休ませてください。具のないみそ汁はお勧めです」

 胃腸科や消化器内科で点滴を受けたり、整腸剤を処方してもらったりすることも可能だ。

 肉の加熱にばかり気を取られそうだが、調理器具への汚染にも警戒が必要だ。カンピロバクターに汚染されている可能性があるので、肉を切った包丁やまな板で野菜を処理するのは避ける。最初に野菜を処理するか、肉類の後に調理器具を消毒してから野菜を処理するようにする。

 井出理事長は「カンピロバクターは75度程度の熱を約1分加えると死滅すると言われているので、肉料理は加熱処理してから食べることが大切です」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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