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認知症になると記憶や理解、判断する力が衰え、日常生活が困難になる。高齢化で患者が急増しており、介護問題も深刻だ。しかし、「認知症と思われた患者が手術で治ることがあります」と近畿大学病院脳神経外科の加藤天美診療部長は話す。その一つが慢性硬膜下血腫による認知症状だ。
転倒や頭部打撲の記憶がないことも
▽放置で死に至る例も
脳は頭蓋内で硬膜、くも膜、軟膜という三つの膜に包まれ保護されている。硬膜とくも膜の間に血液がたまった状態を硬膜下血腫という。通常、高齢男性に多く見られる。
慢性硬膜下血腫は、柱に頭をぶつけた程度の軽い打撲でも発生する。酔っていたり、認知症だったりして、記憶がない可能性もあるが、頭部打撲がなく出血する場合もある。
硬膜下の出血が血腫として残り、だんだん体積が増えて脳を圧迫する。脳の圧迫症状は、打撲後数週間から2、3カ月後に出現し、頭痛、物忘れや認知機能の低下、手足のしびれやまひ、ろれつが回らないなどが見られる。血腫が自然に吸収されることもあるが、血腫を包む膜はもろく、多くは再出血を繰り返し慢性化する。放置して脳の圧迫が限界に達したときや、急に再出血したときは、死に至る場合もある。
特に、酔って転倒し頭を打撲したりする酒好きの人や、加齢や認知症などで脳が萎縮し頭蓋骨と脳との隙間が広がった人、血液を固まりにくくするワルファリンやアスピリンなどの薬を服用している人は、慢性硬膜下血腫を発生しやすい。重症化するケースも多いので注意すべきだ。
▽治療は手術が基本
慢性硬膜下血腫は、頭部コンピューター断層撮影(CT)検査あるいは磁気共鳴画像(MRI)検査で容易に診断できる。治療は、緊急に血腫を除去して、脳への圧迫を除く外科治療が基本となる。症状が出たときは脳の圧迫が既に限界に達していることが多いためだ。
通常、局所麻酔で頭蓋骨に1.5センチ程度の穴を開け、チューブを血腫内に挿入・留置し、血腫を排出する「穿頭(せんとう)血腫除去術」が行われる。手術後、頭部CT検査で血腫の縮小が確認されれば、チューブを抜く。入院期間は数日。「術後の合併症はほとんどなく、症状は劇的に改善します」と加藤診療部長。
高齢者では、慢性硬膜下血腫であるのに認知症と混同されてしまうケースも多いという。「慢性硬膜下血腫は死に至ることもある一方で、手術で治せる病気です。比較的急に(数週間ほど)認知症のような症状が出た、あるいは強まったときには、治せる認知症として慢性硬膜下血腫を疑い、脳神経外科に相談してください」と加藤診療部長は呼び掛けている。 (メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/05/25 11:30)
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