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結核は過去の病気だと思っている人は少なくない。実は、日本は世界的に見ても患者数が少ないとは言えず、結核の中まん延国とされている。人口10万人に対する患者数で表す罹患(りかん)率は、米国や英国などの先進国と比べて高い。国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)呼吸器センターの永井英明統括診療部長は「日本は結核に対する受診や診断の遅れが目立ちます。結核菌は肺だけでなく全身に病気を起こし得る感染症だということを知ってください」と警鐘を鳴らす。
2週間以上、せきやたんが続いたら受診を
▽遅れる診断
日本の結核の罹患状況は、2018年には人口10万人に対して12.3人で、前年より減っているとはいえ、いまだに2桁台が続いている。これに対し米国は2.7人、カナダ4.9人、イタリア6.4人(いずれも17年)と、先進国は軒並み1桁台だ。国内の結核の中で8割以上を占めるのが肺結核で、典型的な症状は2週間以上続くせきとたんだ。
永井統括診療部長は「日本は結核への認識が薄く、せきが続いても受診しない人が多くいます。医療機関でも診断の遅れが目立ち、その間に周囲にうつしている恐れがあります」と危惧する。肺結核患者の21%が、症状が出てから受診までに2カ月以上かかっており、たとえ受診しても診断がつくまでに1カ月以上かかったケースが22%にも達する。
結核菌は空気感染するため、狭い空間に一緒にいるだけでうつる恐れがある。診断が下りた時には、周囲に結核菌をばらまいてしまっていることもある。また、治療の遅れは重症化を招きかねず、命の危険もある。
▽肺以外の感染にも注意
さらに結核菌は、肺以外の臓器にも感染することがある。永井統括診療部長は「肺外結核といって、リンパ管や血液、消化管を通って結核菌が全身に広がることがあります。肺の表面を覆う胸膜に感染する結核性胸膜炎や、頸部(けいぶ)のリンパ節結核、全身の臓器にあわ粒大の病変をたくさん作る粟粒(ぞくりゅう)結核、腸結核や骨・関節結核などがそうです」と説明する。免疫力が低下していたり他の疾患を持っていたりすると、肺外結核のリスクは高まるという。
乳児の頃に受ける結核予防のBCGワクチンは、15年ほどで効果を失い、市販されている不織布のマスクでは結核菌の侵入は防げない。社会全体で結核のまん延を防ぐことが重要になるという。
永井統括診療部長は「せきがある人はせきエチケットを守り、2週間以上せきやたんが続く場合、必ず受診して結核に感染していないかを検査してください」と呼び掛けている。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/12 18:29)
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