せき 家庭の医学

 せきは、気管支の中に吸入された異物や多量に貯留した分泌液を、勢いよく口外へ喀出(かくしゅつ)することにより生体を守るはたらき(生体防御機能)をしています。
 気管支の表面近くに分布する神経が刺激されると、のどをいったん閉じたあとに横隔膜(おうかくまく)や腹筋などを使って一挙に空気を吐き出すのが、せきの起こるメカニズムです。せきには、たんを伴うせきとたんのないいわゆる空(から)せきとがあります。たんを伴うせきは、せきによってたんを喀出してからだを守るはたらきをしていますので、原則的にはせきどめの薬は使用しません。
 かぜ、気管支炎、肺炎などの感染症にかかった場合には発熱やのどの痛みとともに、せき症状が出現します。結核気管支拡張症肺がんなどではせきによって血たんがみられることもあります。せきが長期間にわたって持続する場合には、その原因となる重要な病気が潜在していることもあるので、専門医を受診することが必要です。持続するせきの原因となる病気には、後鼻漏(こうびろう)、ぜんそく、胃食道逆流症(逆流性食道炎)、ACE阻害薬(血圧を下げる薬)の服用などがあります。

(執筆・監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長/順天堂大学大学院医学研究科 教授〔呼吸器内科学〕 髙橋 和久

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