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肝臓の中に袋状の組織(嚢胞=のうほう)ができて、そこに液体がたまる病気を肝嚢胞という。近年、検査機器の発達もあり、人間ドックなどで腹部超音波検査を受けて発見されるケースが増えている。
人間ドックなどで発見。多くは良性だが、注意が必要なケースも
▽多くは経過観察でよい
肝嚢胞のほとんどは良性の単純性肝嚢胞だ。嚢胞の数は1~数個で、大きさは数ミリ~数センチ程度。多くの場合は無症状で肝機能にも影響しないため、治療せずに経過観察となる。「ただし嚢胞が大きくなり、胃や十二指腸を圧迫すると、食事が取りづらくなったり、排便しにくくなったりもします。また、ときに嚢胞内に出血や感染が起こり、腹痛や発熱を引き起こす人も。こうした場合は治療を検討します」と、東京大学医学部付属病院肝胆膵外科の石沢武彰講師は話す。
治療は「経皮的治療」が一般的だ。局所麻酔で皮膚の上から嚢胞に針を刺し、中の液体を抜く。さらに、アルコールを注入して嚢胞の内側の細胞を死滅させ、液体がたまりにくくする処置を追加することもある。一方、最も根本的な治療は開腹や腹腔(ふくくう)鏡手術で嚢胞の壁の一部を切除し、内部の液体を除去する「開窓術」であり、嚢胞の大きさや位置によっては初めから手術が勧められる。
▽注意が必要なケースも
通常はあまり心配のない肝嚢胞だが、注意を要するケースもある。「肝嚢胞のように見えて、肝がんという例も見られます。単純性肝嚢胞は壁が薄く、表面がつるっとしており、中の液体はさらさらしています。それに対して、がんは壁がでこぼこ、中もねばねばした粘液です。この違いは磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査で判別できます」と石沢講師。経過観察の過程で嚢胞が急に増大したり、形が変化したりする場合はがんの可能性があるので、精密検査を受けるべきだという。
また、寄生虫も肝嚢胞の原因となる。「日本では北海道など一部の地域に限られますが、犬やキツネに寄生するエキノコックスが人間に感染し、肝臓に寄生して嚢胞を作ることがあります。状態によっては手術で除去します」と石沢講師。
また、肝臓の中に多数の嚢胞が発生する多発性肝嚢胞という遺伝性の病気も存在する。悪性ではないが、ごくまれに病気の進行によって肝機能に障害が出ることがある。
石沢講師は「単純性肝嚢胞であれば、基本的には心配は要りませんが、中には手術が必要となる病変が隠れているケースもあります。人間ドックなどで肝嚢胞を指摘されたら、一度、消化器内科や消化器外科を受診しておくと安心でしょう」とアドバイスしている。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/23 07:00)
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