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特異的読字障害は「発達性読み書き障害」とも呼ばれ、脳に損傷がないのに文字が習得できない状態で、俳優のトム・クルーズさんが抱えている障害としても知られている。知能の遅れはなく、普通に会話もできるため、気付かれにくい。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所(東京都小平市)知的・発達障害研究部の稲垣真澄前部長は「発達性読み書き障害は、早期発見とその子に合わせた指導が必要です」と話す。
子どもの読み書きに不安を感じたら相談を
▽いじめや登校拒否も
特異的読字障害は、文字を正しく、すらすら読むことが難しい障害で、読めないために書けないという障害を生じる。医学的には発達障害の中の学習障害に分類され、限局性学習症とも言われている。
稲垣前部長は「小さい頃から文字に対する関心が低く、絵本を見てもパラパラとめくるだけで、興味を示さないなどの様子が見受けられます。
しかし、知能的な遅れがないため大半は見過ごされています」と説明する。小学校に入学して、授業で教科書を読む、文字を書くといった学習が始まると、単語の文字を一つ一つ拾う逐次読みをする、文章を正確に読めない、字を書くのに時間がかかり升目や行に納められない、雑な字を書くなどの特徴が目立つようになる。
「いじめの対象になったり、学習性無力感といって、過去の経験からどうせ自分にはできないと諦めてしまい、登校拒否に至ったりすることもあります」と稲垣前部長は指摘する。ただし、周囲の理解があれば、これらは防げるという。
▽個々に合わせた訓練
脳の頭頂葉に角回(かくかい)と呼ばれる場所があり、言語や認知をつかさどっている。発達性読み書き障害は、ここの機能に障害があるため、表記された文字とその読み(音)が自動的に対応できないのではないかと言われている。
診断では知能検査と併せて必ず音読検査を行い、平仮名、漢字、単語や文章などに分け、どこに読み書きの問題があるのかを明らかにする。具体的な指導方法は一人一人異なる。例えば平仮名に問題がある場合は、「あ」や「い」といった文字をパッと見せて、何と書いてあるか正しく言えるようにし、文字音変換の自動化を訓練する。次に、それを単語で行う。
近年では、障害があっても平等に教育や社会生活に参加できるようにという合理的配慮から、テストの問題用紙に振り仮名を振ったり、時間延長や問題の読み上げを行ったりする学校も出てきている。また、早く障害に気付き学習的な介入を行えるよう、稲垣前部長らは幼稚園教諭や保育士らの気付きを促す子どもの様子に関する観察シートを作成した。
「読み書きに障害があるのではと感じたら、発達障害に詳しい医療機関や発達障害者支援センター、児童相談所などに相談してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/08/03 07:00)
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