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慢性的な片頭痛があるにもかかわらず、医療機関を受診せずに市販の鎮痛薬で痛みを紛らわせたり、我慢を続けたりしている人は多いようだ。この誤った対処法が原因で、年齢を重ねてから「脳過敏症候群」が引き起こされることが分かってきた。2011年にこの病気を提唱した東京女子医科大学病院(東京都新宿区)の清水俊彦客員教授に聞いた。
脳過敏症候群の主な症状
▽脳が興奮して過敏に反応
片頭痛のメカニズムは解明されていない部分があるが、ストレスなどの刺激により脳血管内の神経伝達物質セロトニンが増減する。その結果、脳の血管が過度に拡張、周囲の神経(三叉=さんさ=神経)を刺激し、神経炎症を起こして痛みを生じるとともに、脳が興奮状態になり、光や音過敏を生じると考えられている。
片頭痛は遺伝的要素が強く、子ども時代や若い頃から症状が出現することが多いという。治療法として、三叉神経に働き掛けて脳の興奮を抑える片頭痛薬のトリプタンが有効だ。拡張した血管を収縮させ、血管周囲の炎症を抑えることで、頭痛を和らげる効果があるとされる。
年を取ると動脈硬化で血管が広がりにくくなるため、片頭痛の痛みは軽くなる人が多い。しかし、長年、片頭痛の発作を繰り返すうちに脳の過敏性が増し、興奮状態が鎮まりにくくなる。その結果、「わずかな環境の変化にも脳が過敏に反応するようになり、めまいや耳鳴り、不眠などが表れます。過去に片頭痛があり、原因不明の耳鳴りやめまいに悩んでいる人は、疑ってみてもいいでしょう」と清水客員教授は説明する。
▽認知症に似た症状も
脳過敏症候群は、問診と脳波検査によって診断できる。治療には、脳の興奮を鎮め、片頭痛の予防効果を持つ抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウムなど)や、セロトニンの代謝を改善する抗うつ薬(アミトリプチン)などが用いられる。「脳過敏症候群の治療には1年単位の時間を要しますが、めまいなども改善します」と清水客員教授。
一方、脳の前頭葉まで興奮状態が及ぶと、思考がまとまらない、記憶力が低下する、気性が激しくなるなどの症状が表れ、認知症と間違われることがある。「認知症では脳の機能が低下しているため、薬を服用して脳の活性を高めます。脳過敏症候群を認知症と誤診して認知症の薬を用いると、脳の興奮状態がさらに増し、症状が悪化してしまいます。そのため、鑑別診断が重要になります」と指摘する。
清水客員教授は「慢性的な頭痛で悩んでいる場合は、脳過敏症候群への移行を防ぐためにも、市販の鎮痛薬で痛みを我慢せず、専門医を受診してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
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