治療・予防

根気良く治療―爪白癬
5種類の薬から状態に合わせて 東京医科大学病院皮膚科 原田和俊主任教授

 足の爪が白く濁り、分厚くなったりボロボロと欠け落ちたりする「爪白癬」(つめはくせん)。「爪水虫」とも言われるように、カビの一種である白癬菌(水虫菌)が感染して起こる。以前は2種類の経口薬しか治療薬がなかったが、ここ数年で3種類の新薬が加わり、爪の状態や患者の希望に合わせて選択できるようになった。東京医科大学病院(東京都新宿区)皮膚科の原田和俊主任教授に最新の治療法を聞いた。

爪白癬に対する抗真菌薬(処方薬)

 ▽足の水虫菌が爪に侵入

 爪白癬は人口の10%が罹患(りかん)していると推定されている。「足の水虫を放置した結果、白癬菌が爪の中にまで入り込んで発症することが多い」(原田主任教授)という。

 軽症例では自覚症状はないが、進行すると▽爪が白くまたは黄色く濁る▽分厚くなる▽もろくなってボロボロと欠け落ちる▽爪の変形で靴が履きづらい―といった症状が表れる。治療せずに放置すると、スリッパや足拭きマットなどを介して他人にうつしてしまうことがある。全身の皮膚に白癬菌が広がる例もある。

 ▽生え替わるまで1年

 そこで、白癬菌の生育を抑える抗真菌薬を用いて、爪の濁りが消え、顕微鏡でも白癬菌を観察できない「完全治癒」を目指す。抗真菌薬は現在、経口薬3種類、外用薬2種類が処方薬として承認されている。

 効果が高いのは経口薬の方だ。テルビナフィンやイトラコナゾールに加え、新薬のホスラブコナゾールも使用できる。原田主任教授は「いずれも6割程度の完全治癒率が期待できます」と話す。服用期間は3~6カ月だが、足の爪は生え替わるまで1年程度かかるので、服用が終了しても定期的に皮膚科を受診し、完全に治癒したか確認してもらうことが望ましい。

 経口薬の副作用としては肝臓障害が代表的なもので、定期的な血液検査でチェックする必要がある。他の薬との飲み合わせに注意すべき薬もある。

 肝臓の機能が悪くて経口薬が使えない患者や、軽症・中等症で経口薬を希望しない患者などには、外用薬(エフィナコナゾール、ルリコナゾール)がある。1日1回の塗布を1年ほど続ける。完全治癒率は約2割だが、主な副作用は爪周囲のかぶれで、重い副作用は報告されていない。

 爪白癬の正確な診断には、皮膚科医が爪を削って白癬菌の有無を顕微鏡で調べる必要がある。見た目がきれいになっても菌が残っていれば再発するため、原田主任教授は「皮膚科の専門医を受診し、治療を始めたら根気強く続けましょう」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)

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