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口腔(こうくう)内にいる歯周病菌は、歯周病の発症だけでなく、心臓病や糖尿病、肺炎や関節リウマチなど、数多くの全身の病気を誘発したり悪化させたりする。脳卒中もその一つだ。総合南東北病院(福島県郡山市)オーラルケア・ペリオセンターの和泉雄一センター長は「歯周病の初期は、はっきりとした症状がなく進行します。将来の脳卒中のリスクを下げるには、定期的な歯科医院への受診が必要です」と語る。
定期的な歯科の受診を心掛けて
▽菌は血液に乗り全身へ
歯周病は、口腔内の汚れに細菌が繁殖し、歯茎に炎症が起こる病気だ。特に歯と歯茎の境目の歯周ポケットは汚れがたまりやすく、歯周病菌の温床になる。酸素を嫌う性質があり、炎症で歯周ポケットが深くなるとさらに繁殖が進む。和泉センター長は「歯周病菌は、歯周ポケット壁に微小潰瘍と言われる小さな潰瘍を無数に作ります。そこから毛細血管に入り込み、血液に乗って全身を巡ります」と説明する。
通常、体内に入った細菌は白血球によって食べられてしまう。ところが歯周病菌は、血小板という傷を治す役目を持つ血液成分に取り付くため、白血球は攻撃ができない。赤血球の中にある鉄分を栄養にしながら、やがて血小板同士を集めて塊を作り、その中に入り込む。これが血管内壁に付着すると、コレステロールなどから成るドロドロとしたかゆ状の物質(アテローム)になり血栓ができる。(アテローム性動脈硬化症)。脳内の血管にできれば脳梗塞の引き金になるという。実際、アテローム血栓性脳梗塞の人たちの血液を調べると、歯周病菌の抗体価が非常に高いことが分かっている。
▽半年に1度の受診を
では歯周病を治療したら脳卒中の予防になるのか。和泉センター長は「脳卒中は、飲酒や喫煙、高血圧などさまざまな要因があり、歯周病の治療だけで予防できるとは限りません。ただし、リスクが下がることは間違いありません」と強調する。そのためには歯科医院での定期検診が大事だという。歯周病の原因となる口腔内の汚れは、歯磨きだけで落とすのは不可能だ。「歯科医院で歯石の除去や歯周病のケアを定期的に行えば、進行の変化にいち早く気付くことができます」
50代になると、半数の人が冒されているという歯周病。和泉センター長は「今からでも遅くありません。将来の脳卒中リスクを軽減するために、半年に1回は歯科医院を受診することを習慣付けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/10/19 06:00)
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