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運動を始めるとすぐに、息切れやせき、たんなどの症状が出て、周囲から後れを取るアスリートは少なくない。日本スポーツ内科学会の田中祐貴代表理事は「運動時にだけ表れる運動誘発性ぜんそくかもしれません」と話す。
運動開始後にぜんそく症状が表れ、周囲から後れを取るように
▽運動後に症状出現
運動誘発性ぜんそくは、日常生活では何ともないのに、運動開始後5分ほどでぜんそくの症状が表れる。運動を中止すれば、症状は数時間以内に消失する。「アスリート本人も、指導者も運動誘発性ぜんそくに気付いていないケースが多い」と田中代表理事は指摘する。
陸上やサッカーといった比較的激しい持久系の競技や、スキーなどの冬季競技のアスリートに多いとされる。田中代表理事は「冷たく乾燥した空気を繰り返し吸うことで、空気の通り道である気道に炎症が生じて、ぜんそくの発作が起こります」と説明する。
ぜんそくには、アレルギーが関係している。アトピー性皮膚炎や花粉症などの治療を受けている、または受けた経験があるアスリートは、運動誘発性ぜんそくを起こすリスクが高いという。
▽準備運動や気候確認も
運動誘発性ぜんそくの診断には、運動負荷肺機能検査が重要だ。肺活量(息を最大限吸い込んだ後に肺から吐き出せる空気量)や1秒量(息を最大限吸った状態から最初の1秒間で吐き出せる空気量)を測定。安静時と規定の運動負荷を加えた後の2度測定して値の差を見る。運動負荷後の1秒量の値が安静時から10%以上低下すると、運動誘発性ぜんそくと診断される。
治療の基本は、予防的な運動開始5~15分前の吸入治療(短時間作用型β刺激薬)である。程度に応じて、吸入ステロイド薬や内服薬を用いることもある。加えて、運動前の十分なウオーミングアップも効果的だ。さらに、天候の確認も重要になる。前日と比べて気温が大きく下がる日、花粉の飛散が多い日などは、ぜんそく発作のリスクが高まるため、負荷の大きい練習を避ける配慮が必要だ。その他、症状を悪化させやすい風邪などの対策として、日ごろの手洗い、うがいを徹底したい。
田中代表理事は「運動を始めるたびに不調を来すようなら、専門医を受診してください。治療を受け、予防に努めれば、問題なくスポーツを続けることができます。パフォーマンスも向上するでしょう」と受診を呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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