治療・予防 2024/11/22 05:00
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肺がんは進行するまで自覚症状がない場合が多く、最も進行したⅣ期で発見されることも少なくない。しかし、肺がんの大半を占める「非小細胞肺がん」は、手術が難しい進行したがんでも、遺伝子異常のタイプや免疫チェックポイント(CP)阻害薬の効果予測状況に合わせて最適な治療を選べる時代になってきた。兵庫県立がんセンター(兵庫県明石市)の里内美弥子副院長に、非小細胞肺がんの治療の現状について聞いた。
肺がんの多くが非小細胞がん
▽治療が様変わり
肺がんのうち進行が非常に速く、他の臓器に転移しやすい小細胞肺がんは全体の10%ほどで、多くは非小細胞肺がんに分類される。非小細胞肺がんの半数以上は腺がんで、喫煙との関連が強い扁平(へんぺい)上皮がんが続く。
血液は、肺や心臓を通って全身を循環している。そのため、肺のがん細胞は血流に乗って全身に転移しやすい。早期(Ⅰ期・Ⅱ期)に発見されれば手術が行われるが、再発予防のため術後に抗がん薬を使うことも多い。また、リンパ節に転移しているⅢ期で手術ができない場合には、放射線治療と抗がん薬を併用する。転移や胸水のあるⅣ期は抗がん薬を組み合わせた治療が中心になる。
里内副院長は「薬物治療は従来、がんの増殖を抑えてがん細胞を破壊する細胞障害性抗がん薬が主流でした。しかし、分子標的薬と免疫CP阻害薬の登場により、Ⅲ期以降の進行した肺がんの治療は様変わりしました」と話す。
▽効果や副作用に個人差
分子標的薬は、がん細胞の発生や増殖に関わる特定の分子(タンパク質)を狙って攻撃する。現在、六つの遺伝子の変異や異常に対応した薬が承認されている。完治するわけではないが、がんを小さくする可能性が高く、一部では劇的な効果が得られることがある。
一方、免疫CP阻害薬は、患者の免疫細胞ががんを攻撃できるように働く。単独で用いた場合、一部の人で治療終了後もその効果が長く続く場合がある。また、放射線治療や抗がん薬などと併用すると、より効果が得られるという人が増えることが報告されている。
治療を始める前に、分子標的薬が使える遺伝子異常の有無や免疫CP阻害薬の効きやすさを調べる。その上で、患者の年齢や合併症、全身状態も考慮して治療を選択する。分子標的薬は飲み薬、免疫CP阻害薬は点滴で投与し、いずれも通院での治療が可能だ。
肺がん治療は進歩を続けており、治療効果や副作用に個人差はあるものの、治療成績も飛躍的に向上している。里内副院長は「転移のある肺がんと診断されても、自分に合った治療を受けられれば、仕事を諦めることなく普段通りの生活を続けられる可能性があります」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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