放射線治療

 放射線治療は、手術と同じく局所療法のため、効果も副作用も放射線を当てた場所にのみ、あらわれます。人体は放射線に弱く、わずかなエネルギーの放射線でも強い影響を受けます。がん細胞は正常細胞よりもさらに放射線に弱いので、がん細胞を死滅させながら周囲の正常細胞を生き残らせる、ちょうどよい放射線量を照射することで、がん治療が可能となります。

■根治的放射線治療
 放射線治療でがんを根治させる方法です。疾患によっては手術と同等の治癒率が得られます。前立腺がんや子宮頸がんがその例です。喉頭がんや食道がんでは、臓器を温存するために放射線治療を選ぶことがあります。肺がんの定位照射(ピンポイント照射)は、心臓や肺がわるくて手術ができない場合に、手術に代わる選択肢となります。化学放射線療法といって、抗がん薬と放射線を併用することで、より強力な治療とすることも多いです。

■緩和的放射線治療
 根治がむずかしくなった状況において、疼痛(とうつう)などの症状を軽減させる方法です。骨転移や脳転移への放射線治療が一般的です。多くの場合で症状緩和の効果が得られます。

■術前・術後照射
 手術の前後に放射線治療を組み合わせることで、より強力な治療としたり、再発防止の役割を果たしたりします。早期乳がんに対して、乳房全体ではなく腫瘍のみを切り取って、残った乳腺に術後照射をおこなう乳房温存療法は標準治療となっています。進行した直腸がんでは術前照射により手術範囲を縮小して、肛門を温存できることがあります。


□外照射(外部照射)
 リニアック(ライナック)と呼ばれる大型の機械から放射線ビームを照射する方法です。人間は放射線を感じないので痛みはまったくなく、ほとんどの場合は数分間の治療となります。2~7週間くらい平日毎日続けることが一般的ですが、近年では1日~1週間程度で集中的に治療する方法もあります。かつては病巣とその周囲も含めて大きく照射する2次元の治療で副作用も多かったのですが、現在はCT画像から腫瘍の形を3次元的にとらえ、それを平面投影図にしたビームを用いる3次元原体照射(3D-CRT)が主流です。さらに、ビームの内部に意図的な強弱を付けて、さまざまな方向からのビームを合算したときに複雑な腫瘍の形に一致して放射線が当たり、かつ周囲の正常組織の線量を極力抑えるような強度変調放射線治療(IMRT)も一般的になってきました。

□小線源治療、粒子線治療
 小線源治療は、かつてはラジウム、現在ではイリジウムなどの放射線同位元素を腫瘍の内部に挿入し、至近距離から強力な照射をおこなう方法です。腔内照射や組織内照射という呼びかたもあります。粒子線治療は、おもに陽子線あるいは炭素イオン線(重粒子線)を用います。通常の外照射で用いるX線と異なり、ビームが腫瘍を通過したあとにすぐ消えるので、腫瘍の周囲にある正常組織を守れます。X線より強力な効果も認められています。

(執筆・監修:公益財団法人 がん研究会 有明病院 放射線治療部長 吉岡 靖生)