治療・予防

速い進行と転移―小細胞肺がん 
積極的な検診を

 肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大きく分けられる。小細胞肺がんは肺の中で急速に広がり、他の臓器への転移も速い。そのため迅速な治療が必要になる。近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)腫瘍内科診療部長の中川和彦主任教授に聞いた。 

風邪でもないのにせきやたんが続くようなら早めに受診して検査を

風邪でもないのにせきやたんが続くようなら早めに受診して検査を

 ▽早期発見は困難

 小細胞肺がんは、肺がん全体の10~15%を占める。がん細胞自体が他の肺がん細胞と比べて小さく、密集して広がっていくことから小細胞肺がんと呼ばれる。主な原因は喫煙だが、大気汚染物質のPM2.5や放射線、アスベストなどの有害化学物質もリスクになる。

 がんは、気管が左右の肺へと別れる肺門部に生じる。肺門の近くには上大静脈やリンパ節があるため、がん細胞が肺の中で広がると、他の臓器にも転移しやすい。しかし、初期症状はせきやたん、発熱、体重減少などが多く、他の呼吸器系の病気と区別がつかず、肺がんに気付きにくいという。

 中川主任教授は「初期(Ⅰ、ⅡA期)での発見例は極めて少ないと言われています。この段階であれば、手術も可能ですし、治る可能性も高くなります。しかし、小細胞肺がんの早期発見は難しく、有効な薬物療法の開発が重要となります」と強調する。

 ▽治療は薬と放射線 

 手術が行える時期に発見される例が少ないため、小細胞肺がんの治療は薬物療法と放射線療法が中心となる。特に薬物療法では、殺細胞性抗がん薬に加えて、2019年には進行例に対して免疫チェックポイント阻害薬が承認され、治療の幅が広がった。

 小細胞肺がんは、がん細胞の肺での増殖や他臓器への転移が早い段階で起こる。放射線治療では、照射範囲の限界や照射量の制限があるため、転移が広範囲に及ぶと、放射線治療が困難になり、根治の確率は下がる。

 「他の臓器に転移する前に見つけることがとても大事です。風邪をひいているわけでもないのにせき、たんが絡むといった症状が長引くようなら、早めの受診と胸部X線検査の実施をお勧めします」と中川主任教授は話している。 (メディカルトリビューン=時事)


新着トピックス