治療・予防 2024/12/24 05:00
進行を予測する指標発見
~間質性肺炎の早期治療で(大阪大学大学院 榎本貴俊医師ら)~
流産(妊娠22週未満の妊娠中断)または死産(妊娠22週以降の胎児死亡)を2回以上繰り返す病気を不育症という。流産や死産を経験した人の喪失感は想像を絶するが、不育症の研究は日々進歩しており、適切な診断、治療を受ければ赤ちゃんを無事産める可能性は高い。諦めないことが大切だ。
不育症の原因(リスク因子)
▽約100万人との推計も
出産年齢の高齢化に伴い、流産が増える可能性が指摘されている。専門医らが作成した「不育症管理に関する提言2019」(以下、提言)によると、流産率は女性の年齢が35歳以上で上昇し、40歳以上では40~50%にも上る。流産の回数が多いほど、次の出産に至る確率が低下する。
提言を作成した神戸大学医学部付属病院(神戸市)産科婦人科の山田秀人教授は「国内で2回以上流産を経験した人は約3%とされます。不育症は国内で毎年約3万人が発症し、不育症経験のある人は約100万人と推定されます」と説明する。
▽原因が不明な患者に光
山田教授によると、不育症の主な原因(リスク因子)は、〔1〕子宮の形の異常〔2〕バセドウ病などの甲状腺機能の異常〔3〕夫婦いずれかの染色体異常〔4〕細胞膜のリン脂質とタンパクとの複合体に対する自己抗体が作られ、胎盤の周りに血栓ができて胎児に栄養が届かなくなる抗リン脂質抗体症候群〔5〕血が固まりやすくなる血液凝固障害―の五つが挙げられる。ただし、検査を受けても原因が特定できない患者が約半数いるという。
治療法は原因によって異なり、子宮の形の異常には子宮手術、甲状腺機能の異常には薬の服用、染色体異常がある場合は夫婦で遺伝カウンセリングを受けるなどする。抗リン脂質抗体症候群や血液の凝固異常の治療には、血栓の形成を防ぐアスピリンやヘパリンの投与が行われる。原因不明の場合でも、妊婦に優しく接して不安を取り除く精神的なケア「テンダー・ラビング・ケア」により、流産率が低下することが報告されている。適切な治療を受けることで、8割以上の患者が無事に赤ちゃんを産めるという。
山田教授らは、不育症や抗リン脂質抗体症候群の原因となる新たな自己抗体(ネオ・セルフ抗体)を発見。不育症患者227人を対象に測定した結果、同抗体が52人(全体の23%)で認められた。検査で原因不明だった患者の場合でも121人中24人(20%)が陽性となり、不育症の重要な原因であることが明らかになった。今後、有効な治療法が開発され、健康な赤ちゃんの出産につながることが期待される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/02/12 05:00)
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