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認知症の介護などで、一生懸命にケアをしても相手から拒否されたり、暴言を吐かれたりすることがある。老年医学が専門で国立病院機構東京医療センター(東京都目黒区)総合内科の本田美和子医長は「介護者が悪いのではなく、ケアのやり方に改善の余地があるのだと思います」と話し、フランス発祥のケアの技法と哲学「ユマニチュード」を紹介する。
ユマニチュードをもっと知りたい人へ
▽友人宅の訪問と同じ
ユマニチュードは「ケアがうまくいった時といかなかった時を振り返り、相手を大切に思う気持ちをいかに相手が理解できるように届けるかを体系化したものです」と本田医長。うまくいったケアには、友だちの家を訪ねて食事をし、おしゃべりをして名残惜しく別れるのと同じような流れがあるという。
ユマニチュードでは、食事や入浴の介助をいきなり行ったり、終わったらすぐ退去したりせず、〔1〕出会いの準備〔2〕ケアの準備〔3〕知覚の連結〔4〕感情の固定〔5〕再会の約束―という五つの段階を踏んでいく。
まず、出会いの準備。ドアをノックするなどして相手の同意を得てから入室する。「ふすまでも、ドアがなくても音を出し、相手のプライベートな空間に入ることを知らせます」
ケアの準備とは、友人を訪ねた際のあいさつや雑談に当たるもので、これから行う入浴や食事について同意を得る。知覚の連結は実際のケア、感情の固定は、「きょうの料理はおいしかったね」と成果を共有するようなことだ。
▽介護者の負担も軽減
重要なのは、それぞれの段階で「見る」「話す」「触れる」「(相手が)立つ」の四つを意識して行うこと。「複数のコミュニケーション方法を同時に行うことで、相手を大切に思う気持ちが伝わります」と本田医長は強調する。確かに、「体位を変えましょう」と言う声は優しくても、目線を合わさずに強く手首をつかんだら、気持ちは伝わらないだろう。
2017年に本田医長が発表した国内の研究でもユマニチュードの有効性が確認されている。認知症などの高齢者を自宅で介護する145人にユマニチュードの研修を2時間受けてもらい、その後、週1回、研修で習った内容を実践できるようユマニチュードの技法や助言を記した絵はがきを送る支援を3カ月続けたところ、認知症の高齢者の行動・心理症状と介護者の負担感が明らかに軽減した。
本田医長はユマニチュードを自転車に例える。習えば乗れるようになり、その後は乗り方を忘れないという意味だ。日本ユマニチュード学会は初心者向けの本や動画をウェブサイトの中で紹介している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/14 05:00)
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