Dr.純子のメディカルサロン

コロナ禍で、健康診断を控えるリスク 内視鏡のスペシャリスト倉持章医師に聞く

 昨年、皆さんは健康診断(健診)を受けましたか。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で受診を控えてしまった人もいるのではないでしょうか。私は産業医をしていますが、昨年は人間ドックの受診をやめた人もいて気になっています。健診を控えることが問題にはならないか、気になるところです。苦しくない胃の内視鏡で定評のある、倉持章先生にお話を聞きました。

(聞き手・文 海原純子)

倉持章医師【時事通信社】

2年以上の受診控えは危険

 海原 新型コロナウイルスの感染拡大から1年、健診に行くのをためらう人が多いのが気になります。感染が怖くて、必要な受診を控えてしまう状況は現場ではどのように感じていますか。実際、必要な検査を受けていない人は、いらっしゃるのでしょうか。

 倉持 コロナが1年半程度で収束するなら、大勢に影響はないとみています。ただ、それ以上になるとリスクが懸念されます。

 海原 昨年春から感染が広がったわけですから、昨年健診を受けなかった人は、今年夏くらいまでが期限ですね。

 倉持 私の専門の消化器内科の範囲では、健診で見つかるのは主に「胃がん」「大腸がん」です。アフターコロナで、「毎年欠かさず内視鏡検査を受けていたら、進行がんにならずに内視鏡手術で切除できたはず、あるいは、開腹手術になったとしても、切除範囲を小さくできたはずだ」という症例が、少し多くなることを危惧しています。コロナで3年間くらい受診控えが起こるとしたら、これは大問題で、進行胃がんや進行大腸がんが見つかることになってしまい、医師側からみると「救える命が救えなかった」という症例が、かなり増えてしまうと思います。

 海原 このような受診控えで、問題が起こることが現実に増えていますか。

 倉持 区民健診などでは、確かに受診者数は減っていますが、胃カメラ・大腸カメラの定期のフォローアップの人は、結構、真面目に受診してくださいます。うちのクリニックでは、患者さんが前年に内視鏡を受けていただいた際に「なぜ1年後にフォローアップが必要か」を詳細に説明しているので、そのことが関係しているのかもしれません。

 海原 普段、かかりつけのドクターとコミュニケーションが行き届いていて、次回の検査を把握している人は大丈夫ということですね。逆に、健診書類の1年後再検査という記録だけ見ていて、ドクターとコミュニケーションが不足しているような場合は、リスクがあるといえますね。

 安心なクリニックで検査を受けたいと思う人は、どうやって見つければいいのでしょうか。いつものかかりつけ医のところがどのような感染対策をとっているかなど、チェックする方法はありますか。


スキルのある安心な医師にかかるには

 倉持 「安心なクリニック」の見つけ方ですね。ひと昔前は、口コミや知人からの紹介が主流でしたが、今はやはりホームページの検索が一番よいと思います。気になる疾患の「専門医」や「診療歴」が、キーワードとしてかなり頼りになると思います。

 「かかりつけ医のところがどのような感染対策を取っているか」ということですが、これも、ホームページ上に掲載しているところがほとんどだと思います。もし、記載がなければ、電話して聞くしかないです。胃カメラを上手に受けるには、検査を担当する医師の技術はもちろん、検査に関わる看護師などスタッフの習熟度が重要になってきます。「総合力」といってもよいかも知れません。総合力を推し量るには、やはり検査数が目安になってきます。

 検査数は年間500件以上が目安です。胃カメラの挿入経路は、鼻から(経鼻)なのか、口から(経口)なのか、その両方に対応できるのがいいです。また、苦しさや痛みが気になると思いますが、鎮静剤は経鼻のときは不要で、経口なら鎮静剤使用が楽です。検査時間は5分程度が標準的です。

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