Dr.純子のメディカルサロン

コロナ禍で、健康診断を控えるリスク 内視鏡のスペシャリスト倉持章医師に聞く

上が鼻からのスコープ、下が口からのスコープ【倉持章医師提供】

上が鼻からのスコープ、下が口からのスコープ【倉持章医師提供】


鼻からの胃カメラは苦しさが少ない

 海原 先生のクリニックでは、鼻からの胃カメラをなさっています。胃カメラは苦しくてという理由で敬遠している人もいますが、鼻からのカメラはどのような利点があるのでしょうか。

 倉持 「鼻から」のメリットは、解剖学的にスコープが舌根(舌の奥の方、指で押すとオエッとなるところ)に触れないので、嘔吐(おうと)反射が起きにくいことです。また、検査時間は5分程度ですし、鎮静剤を使わないので、検査後の生活制限もありません。

 海原 鼻からできない人はいますか?花粉症や副鼻腔(びくう)炎がある人はできるのでしょうか。

 倉持 「鼻から」の唯一の欠点は、鼻腔が狭くて通らない人がいることです。こればかりは、実際にやってみないと分かりません。検査直前に、両鼻腔内に表面麻酔を噴霧して、両鼻の入りやすい方からスコープを挿入します。経鼻内視鏡の直径は5.8mm~5.9mmですから、これより鼻腔が狭いと「鼻からは入らない」ことになります。花粉症や副鼻腔炎など炎症が強い人は、鼻腔が狭小化します。花粉症の人は、春を避けて、夏から冬に検査を受けていただきます。その他の通年のアレルギーの人は、「まず鼻からやってみる」という対応になります。

 海原 以前は、鼻からのカメラは視野が狭いなどといわれていましたが、現在はどうなのでしょうか。

 倉持 かつて「経鼻用のスコープは細いので、画質が悪い・解像度が劣る」といわれていましたが、超高性能のCCDが開発され、その問題は解決されました。カメラは超高画質で高性能ですので、医師がその高性能を使いこなせているか、の方が問題です。


検査はどのくらいの頻度で?

 海原 胃カメラの検査は、どのくらいの頻度でするのがいいでしょうか。

 倉持 基本的には、かつてピロリ菌がいて除菌後の人は1年に1度、ピロリ菌がいなかった人は3~5年に1度、その他の病気(ポリープ、逆流性食道炎など)の人は2~3年に1度―が目安です。

 海原 胃カメラと一緒にしておいた方がいい検査を教えください。

 倉持 腹部超音波検査は侵襲が少なくて、情報量も多いのでお勧めです。大腸カメラは、便潜血で引っかかった人は必須ですが、便潜血陰性でも、「慢性便秘」「便が細くなった」「家族歴(大腸ポリープ大腸がん)」の人には強く勧めます。

 あとはピロリ菌の検査です。胃の中に住みつくピロリ菌が発見されたのは1982年で、医学界では比較的最近の出来事です。それまでの内科学の教科書には、「胃内にはほとんどの細菌は住めない」となっていて、それが常識だったのです。現在では、胃がんの主原因としてのエビデンスが確立し、当院ではピロリ菌陽性と分かった場合、すべての人に除菌を勧めています。


 倉持 章(くらもち・あきら) 1996年東京慈恵会医科大学卒業。同大学付属病院で内科初期研修後、内視鏡科に入局、医局長や診療医長などを務めた。2013年に東京都江東区に住吉内科消化器内科クリニックを開院。大学病院の現場で得た最先端医療の知識・経験を生かし、地域のかかりつけ医として人々の健康維持に努めている。開業時からの理念でもある、ピロリ菌の除菌と定期検査による「江東区から胃がん死0(ゼロ)へ」の実現を目指している。日本内科学会認定内科医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医。著書に「行列のできる胃カメラ屋」。




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