治療・予防

梅毒による目の病変
早期発見・治療が重要(国立国際医療研究センター病院眼科 八代成子医長)

 性感染症梅毒は性器など、感染局所のしこりやただれから始まり、進行すると目に病変が表れることもあり、眼梅毒と呼ばれる。眼科を受診し初めて梅毒と分かる場合もある。眼科感染症を専門とする国立国際医療研究センター病院眼科の八代成子医長に聞いた。

眼梅毒の症状(白目の部分)

 ▽10年ほど前から急増

 梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌による性感染症。性的接触のほか、感染した妊婦の母親から胎児にうつる母子感染もまれにある。

 国内では、10年ほど前から患者が急増し、2018年の報告数は約7千人に及んだ。特に若い女性の増加が目立つ。八代医長は「増加の原因はよく分かっていませんが、性行動の多様化や海外からの旅行者の増加などが関係している可能性が考えられます。世界規模での増加傾向は今後も続くでしょう」と予想する。

 ▽発疹が診断の参考に

 眼梅毒ではどのような症状が見られるのか。「感染から1カ月前後でまぶたや結膜という白目の上の膜にしこりができ、感染後1~3カ月ごろに目の内側にある網膜やぶどう膜、白目の部分にあたる強膜、さらに視神経に炎症が起こることが多いとされます。主な自覚症状は白目の充血、かすみ目、視力低下など。炎症の場所によっては目の痛みを感じることもあります」

 そうした症状を訴えて眼科を受診し、梅毒感染が判明する患者が以前より増えている印象があると言う。
 目以外の症状も診断の参考になる。「目の症状や検査所見は眼梅毒に特徴的なものではありません。そのため、感染初期に全身に生じる発疹(ほっしん)、特に手の発疹は眼梅毒を疑う重要な手がかりとなります」。確定診断には血液中の抗体検査が必要になる。

 八代医長は「眼梅毒は神経梅毒を合併することが多いため、放置すると目だけではなく神経の病気が出現する可能性があります。眼梅毒も含め、きちんとした治療を受ければ治る病気です。早期に発見すれば、生涯にわたり視力障害を残すことなく治療できます。できる限り早く眼科医に相談してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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