治療・予防

ドナーの食べたもので輸血副反応?
~アレルギー患者で活性化(信州大学医学部付属病院 柳沢龍准教授)~

 卵、牛乳などを食べるとじんましんが出る食物アレルギーの人に輸血が行われる際、ドナーが採血前に摂取した食品が原因でアレルギーを起こす可能性のあることが分かった。研究を行った信州大学医学部付属病院(長野県松本市)輸血部の柳沢龍准教授に話を聞いた。

輸血でアレルギーを起こしやすい人の例

 ◇進まない原因解明

 輸血は、年間100万人以上に行われている。「以前に比べ、安全性は大幅に向上しましたが、今なお年間少なくとも2500件以上の輸血副反応が報告されています。その約7割を占めるのがアレルギー性輸血副反応(ATR)です」

 ATRが起こると、じんましんかゆみ、顔面が赤くなるなどの症状が出る。大部分は軽症だが、まれに呼吸困難や血圧低下を伴うアナフィラキシーを起こす場合も。輸血中にアレルギー症状が表れたら、「輸血を中断して抗アレルギー薬を投与します。可能なら輸血を再開します」

 ATRを起こしやすいのは「アレルギー疾患の患者、過去の輸血でATRを起こしたことがある人、子ども、白血病をはじめとする血液がんの人などと推測されています」。原因や発症メカニズムの解明はほとんど進んでいない。

 ◇輸血前に病歴伝えて

 柳沢准教授らは、食物アレルギーと診断された18歳以下の子ども(卵アレルギー84人、牛乳アレルギー38人、小麦アレルギー13人)の血中に含まれる好塩基球(アレルギー反応に関与する白血球)と、健康な人から採取した血液を反応させる試験を実施した。

 分析の結果、卵アレルギーの子の好塩基球を卵摂取後の健常者の血液と反応させると、摂取前の血液と反応させた場合に比べ、好塩基球は明らかに活性化することが分かった。この現象は、卵に対するアレルギー感作(かんさ)が強い子やアナフィラキシーの経験がある子でより顕著だった。牛乳・小麦アレルギーの子どもでも同様の結果が出た。

 柳沢准教授は「今後、輸血によるアレルギーの解明が進み、より安全な輸血療法の確立につながると思う。アレルギー疾患を持つ人は、輸血前にアレルギー歴やATR発症の有無を医師に伝えてください。そうすれば、早めに対策を講じることが可能になります」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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