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認知症と似た症状が特徴の脳腫瘍の一つ「中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)」。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)脳脊髄腫瘍科の成田善孝科長は「進行が速く、すぐに診断し、治療を始める必要があります。脳神経外科を早めに受診しましょう」と指摘する。
▽高齢者に多い悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、血液細胞のリンパ球が無秩序に増えて腫瘍をつくるがんの一種。病変が脳や脊髄などに限られるのがPCNSLで、年間約1100人が発症し、65歳以上が85%を占める。高齢化で患者は増加傾向にある。
腫瘍がある脳の場所によって症状は異なるが、認知症に似たもの忘れや、言葉が出にくい、手足のまひといった脳卒中に似た症状が表れることもある。週や月単位で病気が進行する。
診断には、頭蓋骨に小さな穴を開けるなどして脳の組織を採取する手術を行う。組織を顕微鏡で調べてPCNSLと確定すれば、通常は4種類の抗がん剤を組み合わせて治療を始め、その後に放射線治療を行う。
「抗がん剤や放射線が脳の神経に与える影響を心配する声もありますが、PCNSLの特徴を考えれば、積極的な治療が必要です」と成田科長。治療で40~50%の5年生存率が期待できる。ただ、効果があった人でも半数以上は3年ほどで再発し、従来は「同じような治療法を繰り返すしか手段がありませんでした」(成田科長)。
▽再発時の飲み薬が登場
再発時や従来の治療が効かないPCNSL向けに、2020年5月に新薬チラブルチニブが発売された。悪性リンパ腫の増殖に関わる「BTK」という酵素の働きを抑える飲み薬だ。成田科長は「半数の人に腫瘍を小さくする効果があり、半年くらいコントロールできるでしょう。チラブルチニブで治療中に悪化したら再度抗がん剤を使用するなど、治療の幅が広がりました」と話す。
ただ、免疫にかかわる血液細胞の減少、皮膚の発疹など副作用がある。また、1日分の薬剤費は約3万円(患者負担はその1~3割)と比較的高い。より有効性を高める方法や服薬をいつまで続けるかなどが今後の課題という。
(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/10/13 05:00)
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