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悲惨な事件や災害などで心身に傷を受ける心的外傷後ストレス障害(PTSD)は一般的に知られるようになったが、過酷な出来事を繰り返し経験することで生じる「複雑性PTSD」についてはあまり知られていない。両者の違いについて、山梨県立北病院(山梨県韮崎市)の宮田量治院長に聞いた。
PTSDと複雑性PTSDの違い
▽病状が複雑化
事件や事故、災害などの経験で心が不安定になっても、通常は3日以内に治まるが、出来事から数日以上たってから、眠れない、気持ちが高ぶって落ち着かないといった症状がある場合はPTSDの可能性がある。関連する言葉などに接しただけで恐怖がよみがえり、そうした刺激を避けるようにもなる。
複雑性PTSDの存在は世界保健機関(WHO)が2018年に定義した。逃げ場のない状況で長期にわたり過酷な体験を繰り返すことが原因となる。従来のPTSDの症状に〔1〕いらいらして怒りやすくなるか、逆に感情を押し殺す〔2〕自分には価値がないと思い込む〔3〕人との関わりを避ける―などが加わり、病状が複雑になる。
具体的には家庭内暴力や虐待などの体験だが、宮田院長は「親の不適切なしつけも複雑性PTSDの一因になります」と指摘する。家庭内という閉ざされた環境での厳し過ぎるしつけは、親に愛情があっても、子どもに「心的外傷」を来す可能性があると言う。
▽専門機関に相談を
過酷な体験の反復があり、眠れない、気持ちがふさぐなどの症状があれば、医療機関を受診したい。複雑性PTSDか別の疾患なのかを精神科医が見極め、症状に応じた精神療法、薬物療法、生活支援が行われる。宮田院長は「生きづらさは乗り越えられると信じてください」とメッセージを送る。
宮田院長によると、複雑性PTSDの成因や程度には幅があり、社会生活に適応できるケースもあるが、学校生活や部活動での失敗、挫折をきっかけに引きこもることもある。その場合、家族はどうしたらよいか。「自分たちだけで解決しようと思わず、自治体の窓口や精神保健福祉センターに相談するとよいでしょう」。1カ所で十分な対応が得られなければ、複数の人や機関に相談するのがよいという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/05/22 05:00)
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