治療・予防 2024/12/18 05:00
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滲出(しんしゅつ)性中耳炎は、痛みはないが鼓膜がうまく振動しなくなるため聞こえが悪くなったり、耳詰まりや自分の声が響く感じがしたりする。帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)耳鼻咽喉科の伊藤健主任教授は「他の中耳炎に移行する恐れもあるため、しっかり治療することが大事です」と話す。
耳管がふさがり、中耳に滲出液がたまる
▽小児と大人で別原因
鼻の奥(上咽頭)と中耳をつなぐ耳管(じかん)は、中耳に空気を送り、圧力を平衡に保っている。老廃物や滲出液を鼻に排出したり、細菌などの侵入を防御したりもする。滲出性中耳炎は、何らかの原因で耳管がふさがり、中耳に滲出液がたまって起こる。
小児から高齢者まで発症するが、小児と大人では原因が異なるという。小児の場合は、アデノイド肥大と先天性疾患の二つが挙げられる。アデノイドは上咽頭のリンパ組織で、2歳ごろから大きくなり、10歳頃に小さくなる。
「肥大したアデノイドが耳管の入り口をふさぐと、発症しやすくなります。また、生まれつき上顎が裂けている口蓋(がい)裂があると、耳管を開く筋肉が働かず、滲出性中耳炎の原因になります」
大人の場合は、副鼻腔(びくう)炎や加齢、がんなどが原因になる。「特に上咽頭がんの場合、初期は片側に、がんの進行とともに両側に滲出性中耳炎を発症します」。ただし、原因が分からないことも多く、症状には個人差がある。
▽薬や通気、手術も
検査では、鼓膜に圧力をかけて中耳の状態を診るティンパノメトリーを行う。併せて副鼻腔炎の有無や、大人では上咽頭がんの有無も調べる。
治療は、原因疾患に対してだけでなく、滲出液を排出するカルボシステインという薬の服薬と耳管通気を行う。「耳管カテーテルと呼ばれる細い金属の管を、鼻から耳管の開口部に挿入して通気します。小児には、ポリッツェル球という風船のような機器を用います」
症状が改善しない場合は、直接鼓膜を切開して滲出液を出し、直径数ミリのチューブを設置して通気する。設置後は、耳に水が入らないよう注意が必要だ。
治療を怠ると鼓膜が内側にへこんで壁に癒着し、癒着性中耳炎を起こしたり、骨を壊す真珠腫性中耳炎に進行したりして手術を要するケースがある。伊藤医師は「聞こえが悪いと感じたら、年のせいと思わずに受診してください。小児では、離れた場所から呼んでも気付かなければ聞こえが悪いかもしれません」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/05/27 05:00)
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