真珠腫性中耳炎〔しんじゅしゅせいちゅうじえん〕 家庭の医学

 慢性化膿性中耳炎のうち、骨を破壊するもので、放置すると脳に炎症が波及して死亡することもあるために、おそれられている中耳炎の一つです。子どもにも大人にも生じます。
 この病気は、鼓膜の皮膚が内陥して袋状となって中耳腔(ちゅうじくう)に入り込み、増殖します。この袋の中には皮膚の垢(あか)がたまって、真珠のように輝き、腫瘍のように見えるので真珠腫と呼ばれています。真珠腫が中耳内に侵入して耳小骨(しょうじこつ)を破壊すると難聴となりますが、耳だれを伴う場合と伴わない場合があります。炎症がさらに奥の内耳に及ぶと三半規管がこわされ、めまいを起こしたり、感音難聴を起こします。この場合、外耳に空気の圧力をかけるとめまいがします。
 また、顔面神経に感染が波及すると、顔面神経まひも生じます。さらに奥の頭蓋内に感染が生じると、髄膜(ずいまく)炎脳膿瘍など、死にいたるような合併症が起こることもありますが、以前にくらべ頻度はいちじるしく減っています。

[治療]
 重症な合併症をきたすため、手術をおこないます。全身麻酔下で真珠腫を全摘出し、同時に鼓膜と耳小骨を再建する鼓室形成術がおこなわれます。真珠腫の摘出と鼓室形成術は、期間をあけて2回に分けておこなわれることもあります。
 多くは聴力が回復しますが、回復が望めない場合もあります。また、子どもでも大人でも再発することがあり、再手術が必要となることもあります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔耳鼻咽喉科・頭頸部外科〕 山岨 達也
医師を探す