治療・予防

離着陸時に激しい耳痛―航空性中耳炎
「耳抜き」などで予防を

 飛行機の離着陸時に耳に強烈な痛みを感じる、空港に降り立っても耳が詰まった感じが治らない―。これは航空性中耳炎と呼ばれる病気で、飛行機に乗るたびに繰り返す可能性がある。森口耳鼻咽喉科(大阪府枚方市)の森口誠院長に聞いた。

 ▽中耳内の圧の調整障害

 航空性中耳炎は、飛行機の上昇・下降時に機内の気圧が変化し、鼓膜の内部(中耳)と外部との空気圧に差が生じることが原因で、中耳炎が引き起こされた状態をいう。

飛行機の離着陸時に耳に激痛が。繰り返すことも

飛行機の離着陸時に耳に激痛が。繰り返すことも

 中耳は耳管と呼ばれる細い管で、鼻の奥にある上咽頭につながっている。通常、耳管は閉じているが、唾液などを飲み込んだりあくびをしたりすると開き、中耳内の気圧と外気圧が常に一定に保たれるように換気を行っている。

 ところが、耳管の働きがもともと弱かったり、風邪などにより耳管の入り口を鼻汁がふさいでいたりすると、中耳内と外気の換気がうまくできない。「特に、飛行機の離着陸時は気圧が急激に変化します。航空性中耳炎は、この気圧の変化に対して、中耳内の圧力を調整できないことで起こります」と森口院長は説明する。

 症状は主に、耳がふさがった感じ(耳閉感)、鼓膜が内耳側に引っ張られて起こる耳痛のほか、耳鳴りやめまいが生じることもある。痛みは数日で消えるが、中耳内に水がたまり耳閉感が1カ月ほど続くこともあるという。

 ▽予防には耳管の開閉

 航空性中耳炎は、飛行機を利用する機会が多い働き盛りの世代に目立つという。特に、短い時間で急激に気圧が変化することの多い国内線での着陸時に起きやすい。

 森口院長は「出張先などで起きた場合、治療に困るケースも少なくないので予防が大切です」と強調する。予防法は、中耳内の圧と外気圧が等しく保たれるよう耳管の開閉を行うことだ。例えば離着陸時にあめをなめる、ガムをかむなどは唾液を飲み込むので、耳管が開閉されやすい。また、あくびのほか、事前にはなをかんでから鼻をつまんで耳に空気を送り込む「耳抜き」も有効だ。それでも症状に見舞われたら、出張先でもためらわずに耳鼻咽喉科医を受診する。

 航空性中耳炎の治療は、通常の中耳炎と同様だ。中耳にたまっている水を内服薬で排出する。場合によっては、鼓膜を切開する。

 「鼓膜に微小の穴を開け、内耳と外気の気圧差を生じさせない予防法もあります。これまでに激しい痛みの経験があり、飛行機に乗るのが不安な人は、一度耳鼻咽喉医に相談するとよいでしょう」と森口院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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