2024/10/28 05:00
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~治療の遅れは致命的~
救急外来には、毎日のように高齢の骨折患者さんが搬送されてきます。たかが骨折、と侮ってはいけません。
骨折が原因で寝たきりになってしまったというのは、残念ながら、しばしば目にする事例です。今回はそんな、本当は怖い高齢者の骨折に大きく関わる骨粗しょう症について、お話したいと思います。
◇誤嚥性肺炎、心不全にも
まずは、骨折がもたらす影響について、詳しく見ていきましょう。骨折をすると、長期間の安静が必要なため、筋力や心肺機能はどんどん衰えていきます。
骨粗しょう症は痛みなどの自覚症状が出にくい疾患です。「自分は大丈夫」と思わずに、まずは骨密度の検査を受けてみましょう【時事通信社】
食事が取れなくなったり、誤嚥(ごえん)性肺炎になったりして、さらに体が弱っていき、最終的に命を落としてしまうことも、決してまれではありません。
例えば、高齢者の骨折として代表的な大腿(だいたい)骨近位部骨折は、骨折をしなかった人と比べて、その後の1年間の死亡リスクを、男性で3.7倍、女性で2.9倍に高めることが分かっています。
◇誰にでも起こり得る疾患
骨折のリスクを高めるのが、骨の密度と質が低下し、脆弱(ぜいじゃく)性が増大する疾患である骨粗しょう症です。
原因は、加齢、閉経による女性ホルモンの分泌低下、極端なダイエット、糖尿病や慢性腎不全など、多岐にわたります。患者数も多く、日本には推定1280万人の骨粗しょう症患者がいるとも言われています。
骨粗しょう症は、早期発見と早期介入が非常に重要です。適切な食事と運動、節酒、禁煙などの生活習慣は、骨密度低下を緩やかにはしてくれますが、既に低下した骨密度の上昇は、見込めません。これには、専門医による薬物治療が必要です。
◇早期発見のためにできること
最もやるべきは、骨粗しょう症の検診を受けることです。40歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の女性と対象は限定されていますが、骨密度検査を保健所や指定医療機関で受けることができます。
上記に当てはまらない人でも、検査を受けられる場合もあるので、お住まいの自治体に問い合わせてみると良いでしょう。
世界保健機関(WHO)が開発した骨折リスク評価ツール「FRAX®︎」を使って、リスクを自己評価することもできます。
このツールは40歳以上が対象で、年齢、飲酒、喫煙、骨折歴などの12項目に答えると、今後10年間の骨折リスクを算出できます。
この値が15%以上であれば、骨粗しょう症の治療が必要かもしれません。誰でも簡単に、無料で使えるので、ぜひネット上で「FRAX®︎」と検索してみてください。
骨粗しょう症は、治療が必要な人が実はたくさんいるにもかかわらず、情報が浸透していないために、見過ごされてしまっている疾患の一つです。
防げる骨折は防ぎ、いつまでも元気に動ける体でいるために、骨折リスクが高いと思った人は、かかりつけ医や整形外科での相談をお勧めします。
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2022/04/27 05:00)
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