治療・予防

多剤服用はデメリットも
~ポリファーマシーへの対処(敦賀市立看護大学 林祐一教授)~

 高齢者はさまざまな病気にかかりがちだが、多くの飲み薬を常用すると、安全性や効果の面で問題が起きかねない。そのような多剤服用は「ポリファーマシー」と呼ばれ、国も対策に乗り出している。医師で敦賀市立看護大学(福井県敦賀市)の林祐一教授に聞いた。

ポリファーマシー

 ▽飲み合わせなど影響

 何種類以上を「多剤」とするかに一律の基準はなく、数よりも組み合わせの方が問題だとする見方もあるが、一般には飲み薬を5種類または6種類以上とされる。

 林教授は多剤服用に至る背景として〔1〕複数の病気、症状がある〔2〕治りにくい症状に薬が追加される〔3〕効果が十分に評価されないまま、服薬を続ける〔4〕同じ病気に対して複数の医療機関から似たような薬が処方される―などを挙げる。

 その結果、薬の相互作用(飲み合わせ)で効き過ぎたり、効き目が弱まったりする恐れがある。副作用が表れた場合も、どの薬によるものかがあいまいになる。特に高齢者は、薬の分解、排せつを担う肝臓や腎臓の機能が低下し、副作用が表れやすい。

 また患者の心身の状態によって、所定の服薬の時間、量を守るのが難しくなったり、新たに薬が必要になっても患者が拒否したりする可能性がある。

 ▽お薬手帳を一本化

 厚生労働省は、医療機関が一度に7種類以上の飲み薬を出すと診療報酬を減らし、投与中の飲み薬を一定基準まで減らしたら報酬を増やすなど、対策を進めている。

 林教授が以前勤務していた大学病院では、電子カルテの導入後、患者が入院する時点で服用中のすべての薬を明らかにする仕組みをつくった。神経内科と老年内科の高齢患者432人を調べてみた結果、飲み薬は退院時に1人平均1種類ほど減少していたという。

 有害な多剤服用を避けるには、通院治療中の場合は、医療機関や薬局ごとにお薬手帳を作るのではなく一冊にまとめ、かかりつけ医にはそれを見せて相談する。その際は、患者の自己判断で薬を減らしたり中止したりしないことが前提だ。「別の医療機関を受診するときには、服用中の薬を伝えましょう」と林教授は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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