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加齢に伴い睡眠は浅く短くなり、夜中に何度も目を覚ましやすくなるが、高齢の認知症患者では睡眠の質はさらに低下するという。高齢者の睡眠に詳しい、東京工科大学医療保健学部臨床検査学科の榎本みのり講師は「認知症患者の睡眠の質を改善するには、朝日を浴びるなど日中の過ごし方が重要です」と話す。
睡眠改善のための生活習慣
◇睡眠のリズムに乱れ
人の体は、体内時計の働きによって夜眠くなり、朝目が覚める仕組みになっている。この体内時計をコントロールしているのが脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部位で、体内時計に合わせてメラトニンというホルモンを脳の松果体(しょうかたい)から分泌させて体に時間情報を伝えている。
メラトニンは昼間ほとんど分泌されず、夜間に分泌されている。視交叉上核が体内時計をコントールするには、昼間は明るい所、夜は暗い所というように、めりはりのある光環境下で過ごすことが重要だ。「アルツハイマー型認知症では視交叉上核の機能が低下して、睡眠と覚醒の切り替えが難しくなっています」
また、睡眠は、脳が活発に動き夢を見るレム睡眠と、大脳が休息状態にあるノンレム睡眠が約90分置きに繰り返される。「近年の研究で、レム睡眠中は脳がリフレッシュされると分かってきました」。眠りに就くと深いノンレム睡眠が現れ、朝に向けて徐々に浅いノンレム睡眠が増えていくが、認知症患者ではレム睡眠とノンレム睡眠のいずれも減少するといわれている。
◇日中は楽しく過ごす
認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、脳内にタンパク質の一種アミロイドベータ(Aβ)が蓄積するとされる。睡眠中に何度も目覚めたり、布団に入ってからもなかなか寝付けなかったりするとAβは蓄積するという。
アルツハイマー型認知症患者の睡眠の変化を5年間追跡調査した報告では、病気の進行とともに睡眠中に目が覚め、夜間の不眠、昼間の過眠が目立つようになり、やがて昼夜が逆転した。
今のところアルツハイマー型認知症の睡眠障害に有効な薬物療法はなく、▽できるだけ日中に脳に刺激を与えて覚醒させる▽規則正しい日課で生活リズムを保つ▽長時間の昼寝など、夜間睡眠の妨げになる原因を無くす▽体温が下がったときに眠りやすくなるので、就寝前に入浴や足浴で体温を上げる―など生活習慣の改善が主な対処法だ。
また、朝日や日中に浴びる光には体内時計のずれをリセットする作用があり、「睡眠を取ろうと意識し過ぎず、日中は適度な運動などで体を楽しく動かしましょう。そうすれば睡眠は後からついてきます」と榎本講師は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/12/02 05:00)
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