治療・予防

安心して話せる環境を
~幼児の吃音(九州大学病院 菊池良和外来医長)~

 話すときに、同じ音を繰り返したり、言葉に詰まったりする吃音(きつおん)。保育園・幼稚園児の中には、吃音をまねされたり、笑われたりしてつらい思いをする子も。九州大学病院(福岡市東区)耳鼻咽喉・頭頸部外科の菊池良和外来医長は「保護者や園の先生が吃音を理解し、からかいをやめさせて、本人が安心して話せる環境を整えることが治療の第一歩です」と話す。

吃音のある園児への対応例

 ◇まず肯定する

 幼児の吃音症の発症率は5~11%。2~3歳頃から就学前の発症が多く、発症後4年で約7割が自然回復するとされる。しかし、1%前後の子どもは学童期以降まで持続する。「吃音症は言語発達の途上で発症します。原因の8割は体質とされ、育て方が影響するという説は否定されています」

 特徴的な症状として、発話時に「ぼぼぼくね」と同じ音を繰り返す「連発」、「ぼーーくね」と引き伸ばす「伸発」、「…ぼくね」と言葉につまる「難発」―の三つがある。難発では顔や首、手足などを動かす随伴症状を伴うケースがある。

 否定的な反応をされると、本人は「吃音は悪い」と思い込み、発語に対する不安や恐怖を抱く。話す場面を避けるようになり、気分が落ち込み、劣等感を持つ。「4歳頃から吃音をまねする、笑う、指摘する園児が出てきます。その場合は、園の先生が、吃音はわざとでないからそのままでよい、最後まで話を聞くように、と伝えましょう」

 ◇子どもの悩みを聞く

 対応が分からないときは、小児科や耳鼻咽喉科を受診し、必要に応じて言語聴覚士のいる施設に紹介してもらうとよい。「幼児期の吃音は症状の出方に変動が大きいので、自宅で動画を撮影して医師に確認してもらうとよいでしょう」

 「何に困っているか、いじめに発展するような嫌な経験がないかを本人に確認し、一人ひとりに合った対処法や支援、治療を考えていきます。難発や随伴症状に対しては、話し方の訓練を行う場合もあります」

 大人が症状の軽減法を知っていると、子どもの支援や配慮に応用できる。「吃音は、発話のタイミング障害です。ゆっくりと間を取りながら会話すると、より楽に話せます。また、あいさつなどは2人で声を合わせて発声すると、吃音は目に見えて軽減します」

 菊池医師は「困ったら、配慮を必要としていると早期に申し出るよう勧めます。園の先生は本人の悩みを聞いて対応を考えてほしいです」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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