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家庭内パンデミックを防ぐ
~保育園・幼稚園でもらってくる感染症~ 【第2回】

 さまざまな感染症への免疫がない子どもにとって、保育園・幼稚園は感染症に罹患(りかん)する機会が多い場所です。子どもが感染すると、同居する家族も相次いで発症しかねません。ここでは、そうした「家庭内パンデミック」を防ぐ八つの方法について解説します。

図1

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 ◇主な経路は飛沫・空気・接触

 効果的な感染対策を行う上で、病原体がどのような経路で感染していくかを理解することは重要です。主な経路は大きく分けて飛沫(ひまつ)感染、空気感染、接触感染の三つがあり、病原体によって異なります(図1)。

 飛沫感染(インフルエンザ新型コロナウイルスなど)は、感染者がせきやくしゃみ、会話をした際に、口から飛ぶ病原体が含まれた小さな水滴を吸い込んだりすることで感染します。2メートル以上離れていれば、感染の可能性は低くなるとされています。

 空気感染(水痘ウイルス、麻疹ウイルスなど)は、せきやくしゃみ、会話などで感染者から放出された飛沫から水分が蒸発し、微生物を含む5ミリミクロン以下の飛沫核となり、長時間にわたり空中を浮遊。空気の流れによって広範囲に拡散します。同じ空間にいる免疫のない人が、その飛沫核を吸入して感染します。

 付着した病原体を触ることで起こる接触感染(胃腸炎ウイルス、RSウイルスなど)は、感染者に触れるために起きる直接接触感染(握手、抱っこなど)と、汚染された物を介する間接接触感染(ドアノブ、手すり、遊具など)に分けられます。

 ◇八つの対策

 次に家庭内パンデミックを防ぐ八つの具体的な方法を示します。

 1.共有せず
 乳幼児では家族と物理的な距離を取ることは困難ですが、可能な限り食器やタオルなどの共用を避けたり、食事の時間や場所を分けたりするなど工夫します。おもちゃもその子専用にするか、他の子が使用する前に拭き取って消毒するようにします。

 2.ケアは1人で
 感染者の世話をする人を限定すれば、接触するリスクを減らせます。例えば、新型コロナウイルス感染症の場合、重症化リスクの高い基礎疾患のある方、高齢者、妊婦さんはなるべく避けた方がよいとされています。

 3.マスクの着用・せきエチケット
 新型コロナの出現によりユニバーサルマスク(無症状の人もマスクを着用)が定着し、可能な範囲でマスクを着用することは有効であると考えられます。主に飛沫により感染するインフルエンザなどでは特に有効と考えられます。その一方、2歳未満のマスク着用は推奨されていないため、個々の発達段階に応じてリスクとベネフィット(効果)を考慮する必要があります。ノロウイルスなどの胃腸炎において、吐物や下痢に含まれたウイルスが飛散し、それを吸い込んで感染する場合もあるため、吐物や排せつ物を処理する際にはマスク着用が推奨されます。マスクを着用していない状態で、せきやくしゃみを行う際には、飛散を抑えるためにティッシュ(あるいはハンカチ、肘の内側)を使って口と鼻を覆ってするようにします。

図2

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 4.小まめに手指衛生
 手指衛生は全ての感染症を防ぐための基本です。例えば、病原体の付着した手で口、鼻、目を触ったり、病原体の付着した遊具などをなめたりすれば、病原体が体内に侵入します。このような接触感染が主な経路である胃腸炎(ノロウイルスなど)、RSウイルス、腸管出血性大腸菌などに対しては特に有効と考えられ、健康教育の観点からも正しい手指衛生の方法(図2)について子どもに教え、大人も実践することが重要です。食事の前、外から屋内に入るとき、トイレの後、せきやくしゃみ・はなをかんだ後、掃除後、感染者や感染者の周りにある物に触れた後、おむつ処理の前後などに忘れないようにしましょう。目に見える汚れがある場合には、せっけんと流水による手指衛生を行うようにします。アルコールは多くのウイルスや細菌に対して有効ですが、表面を覆う膜のないウイルス(ノロウイルス、エンテロウイルスなど)では有効性が低いので注意が必要です。

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