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日本のがんによる死亡数は、2022年に肺がんが男性1位、女性2位となっている。新たな治療法が求められる中、昨年6月から放射線の一種、陽子線での治療が早期の肺がんに保険適用となった。中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市)肺がん治療センターの樋田豊明センター長に聞いた。
陽子線治療でのエネルギー量のイメージ
◇早期発見が困難
肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がん(扁平=へんぺい=上皮がん、腺がん、大細胞がん)に分類される。非小細胞肺がんが大部分を占め、最も多いのが肺の奥の方にできる腺がんだ。一般的に肺がんといえば非小細胞がん、中でも腺がんを指すことが多い。
肺がんの原因は喫煙などに加え、微小粒子状物質(PM2.5)などによる大気汚染の関与も指摘されている。樋田センター長によると、肺がんは無症状のことも多いことから、自覚症状からは早期発見が難しいという。
主な治療は手術、薬物療法、放射線療法の三つ。進行して他の臓器に転移すると、薬物療法の対象となる。薬物療法はがん細胞の増殖を阻止する殺細胞性抗がん剤、がん遺伝子産物を攻撃する分子標的薬、がんが免疫細胞の働きにブレーキをかける仕組みを解除する免疫チェックポイント阻害薬などがあり、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行われる。
がんが肺や体の一部にとどまっている場合は局所治療としての放射線治療を、手術の前後や薬物療法と併せて行うこともある。
「腫瘍の大きさが5センチ以下で肺にとどまりリンパ節などへの転移がない初期の肺がんなどは手術が適応になりますが、肺の機能が落ちていたり、持病があったり、体力が低下したりしているような場合は手術が難しく、健康保険での陽子線治療の対象になります」
◇正常組織への影響小さい
X線など従来の放射線治療はがん細胞に当たる前に照射エネルギーがピークになるが、陽子線治療は陽子線ががんに届いた時に最大効果が発揮される。陽子線治療は水素の原子核である陽子(粒子)を高速で飛ばしてがんにぶつけ、より高い効果が期待できる。また、これまでは放射線をがんだけに照射することが難しく、がんの周辺にある正常組織にも影響が及んでいた。陽子線治療はがんにピンポイントでエネルギーを当て、正常組織への影響を抑える。さらに照射範囲を狭める技術を用いることでより高い治療効果、安全性が望めるという。
樋田センター長は「早期発見が難しい肺がんは、年1回の健診の受診を。肺がんリスクの高い方は、さらに2、3年に1回程度は被ばくの少ない低線量CTでの詳細な検査をお勧めします」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/01/28 05:00)
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