こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療
その血便は大丈夫?
~増える大腸がん~ 【第6回】
かつてはまれだった大腸がんですが、現在は毎年10万人程度が発症し、死亡率も上昇しています。40歳を超えたら発症リスクが高まるとされており、必要に応じ、内視鏡検査を受けるようお勧めします。

厚生労働省のホームページより
◇S状結腸と直腸に発生しやすく
大腸は食べ物が体の中を通る最後の部分です。おなかの右下にある回盲部から始まり、時計回りに体を1周。盲腸→上行(じょうこう)結腸→横行(おうこう)結腸→下行(かこう)結腸→S状結腸とつながった後、直腸から肛門につながっています。長さは1.5~2m程度で、小腸(6m)より短めです。
口の中で細かくなった食べ物は、胃の中で胃液によって消化された後に十二指腸に送られ、小腸では栄養が、大腸では水分が吸収されます。残りは便として体の外に排出されます。
大腸がんは結腸・直腸に発生するがんで、腺腫というポリープががん化するケースと正常な粘膜から直接生じるケースが存在します。日本人はS状結腸と直腸にできやすいことが分かっていますが、他の部分での発生も少しずつ増えてきています[1]。
大腸の粘膜に発生したがんは、進行とともに粘膜の深くへ浸潤し、リンパの流れに乗ってリンパ節転移を起こしたり、血流に乗って肝臓や肺に転移したりします。肺のレントゲン検査や肝臓の超音波検査をきっかけに転移した大腸がんが見つかる場合もあるため、早期発見が重要と言えるでしょう。
◇生活の欧米化が影響か
大腸がんは戦後に増えてきました。死亡率(人口10万対)を見ると、男性では肺がんに次いで2位、女性では1位となっており、亡くなる方も増加傾向となっています。

がんの主な部位別の死亡率(厚生労働省のホームページより)
発生には多くの生活習慣が関わっていることが分かっており、食生活やライフスタイルの欧米化が患者の増加に影響していると考えられています[2]。例えば喫煙や飲酒、肥満は発症リスクを上げる一方、運動はリスクを下げるとみられています。運動不足や肥満といった点で糖尿病のリスクと似ているとも言われており、生活習慣の改善によって大腸がんのリスクを低減すれば、糖尿病対策にもなるでしょう。
初期は自覚症状がほとんどなく、便に血が混じったり、便の表面に血が付いたりといった程度です。進行すると、がんから出血が続くことで貧血に伴うめまいなどが起きたり、大きくなったがんによって便通が邪魔されて便がしぶるようになったりすることも。血便は痔などでも起こるため、つい様子を見てしまいがちですが、いつもと便の性状が異なる場合には積極的に医師の診察を受けてください。
検診で広く行われるのが便潜血検査です。現在は2日間検便をする2回法が一般的で、便を棒に付着させて便の中に含まれる血液を検出します。痔・ポリープからの出血や生理でも便に血が混じる場合があるため、陽性と判定されたら内視鏡などによる精密検査が必要です。陽性の方から大腸がんが見つかる可能性は3%程度ですが、体に負担のかからない検査として有効と言えるでしょう。
内視鏡検査は大腸がんの診断には最も重要です。検査に不安を抱く方もいるかもしれませんが、鎮静剤を使って苦痛を減らしたり、腸を空っぽにする下剤を院内で服用したりといった対応が取れます。忙しい方に受けていただく方法として、オンラインでの診察(スマート大腸カメラ)、早朝の検査(モーニング大腸カメラ)、土・日曜日の検査といった方法もありますので、ご自身の生活スタイルに合ったクリニックで検査を受けてください。
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(2024/10/08 05:00)
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