治療・予防 2025/04/08 05:00
大腸がん、進歩する薬物療法
~切除不能ながんでも予後改善~
物忘れが多くなったと感じたことはないだろうか。年を取れば記憶力が衰えるのはやむを得ない面があるが、もしかすると認知症の一歩手前である軽度認知障害かもしれない。この段階なら脳の機能が回復するケースがあるのに加え、現在では進行を抑える治療薬も使える。早期発見の重要性が一段と増している。
軽度認知障害と認知症の人数(新井哲明教授の講演資料より)
◇90歳以上の半数が認知症
社会的な問題にもなっている認知症。最大のリスクは加齢だ。政府の推計などによると、65歳以上の認知症患者は443万人(2022年時点)で、高齢者全体に占める割合は約12%。年齢が上がるとともに有病率は上昇し、85歳以上では3人に1人、90歳以上だと半数に上る。筑波大学の新井哲明教授は認知症について「年を取ることと切っても切れない関係にある。(高齢者の場合は)年齢がおおむね5歳上がるごとに発症リスクは倍増する」と指摘する。
疾患別の内訳では、アルツハイマー型が3分の2を占め、最も多い。脳梗塞などの後遺症で発症する血管性認知症が続き、次いでレビー小体型、前頭側頭型となる。この四つを合わせると9割超に達する。
政府は共生社会の実現に向け、認知症の施策を総合的に推進するための基本計画を策定。認知症になっても本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で希望を持って暮らせることを目標として掲げる。半面、発症を抑える取り組みの継続・強化が求められるのは言うまでもない。
◇物忘れ増えたら要警戒
発症抑制の観点から医療関係者が注目しているのが軽度認知障害だ。英語表記(Mild Cognitive Impairment)の頭文字を取ってMCIと呼ばれる。いわば「脳の機能が健常な状態と認知症の中間の段階」(新井氏)で、「新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる」「前日の昼・夕食の内容を思い出せない」「メモしないと忘れてしまうことが増えた」といった軽い認知機能障害の訴えが本人または家族からあるものの、日常生活全般には支障がない状態とされる。MCIは22年までの10年間でおよそ400万人から560万人に増え、この先も増加が見込まれている。
認知症対策について講演する新井哲明氏(2025年2月、都内で開催された伊藤園のフォーラムで)
MCIになった人はその後、①認知機能が改善する②MCIの状態が続く③悪化して認知症になる―に分かれる。日本神経学会のガイドラインによると、認知機能が正常な状態に戻る割合は年間16~41%。認知症になる確率は同5~15%ほどで、「およそ10%と考えると、1年間で10人に1人、5年たてば半数の5人が認知症に移行する。MCIのうちに発見することが認知症予防や生活の質を保つために重要になる」(新井氏)。
◇悪化速度抑える新薬
MCIは体の異常や精神面のストレスなどによっても引き起こされるが、やはりアルツハイマー病が最大の原因。治療の柱は薬物療法となる。使用されるのは抗アミロイドベータ(β)抗体薬で、アルツハイマー病の原因物質である脳内のアミロイドβを除去し、認知機能の悪化を抑制する効果が見込める。日本では23年にレカネマブ、24年にドナネマブが承認・販売されている。
レカネマブを使った調査研究では、使用開始から1年半でアミロイドβが約70%除去され、認知機能悪化が5.3カ月遅くなったとの結果が得られた。主にMCIの段階を対象とする新薬が開発されたことについて、新井氏は「認知症治療は大きな転換期にある」と評価する。
(2025/04/03 05:00)
治療・予防 2025/04/08 05:00
大腸がん、進歩する薬物療法
~切除不能ながんでも予後改善~
治療・予防 2025/04/04 05:00
診断難しい「乾癬」
~病状は多様、進行の度合いに注意も~
治療・予防 2025/04/03 05:00
妊娠糖尿病を正しく診断
~糖負荷試験が有用(神戸大学医学部付属病院 谷村憲司特命教授)~