回復可能な軽度認知障害
~高まる早期発見の重要性~
◇変わらぬ予防の重要性
ただ、この薬を投与しても認知機能の悪化が完全に止まるわけではなく、予防の大切さに変わりはない。よく知られているように、糖尿病や高血圧、高脂血症にならないようにするほか、バランスの良い食事、運動、老年期の孤立回避などを心掛ける必要がある。

抹茶の効能や臨床研究結果を紹介する内田和彦(上)、西沢邦浩(左下)、瀧原孝宣(右下)の各氏(2025年2月、伊藤園のフォーラムで)
筑波大発のベンチャー企業、MCBIの会長で医師でもある内田和彦氏は「認知症は14のリスク要因を改善することで45%減らせるとされる。中年期の生活習慣が非常に重要だ」と強調する。その上で、抹茶の効能に関する研究結果を紹介。同社や筑波大、伊藤園などが共同で実施した臨床試験で、抹茶の継続摂取によって睡眠の質が向上したほか、顔の表情から「怒り」「悲しみ」「幸せ」などの感情を読み取る社会的認知機能が改善したと説明する。
運動が苦手な人もいるし、栄養バランスを考えた食事も「相当気を付けないと実現は難しい。ドリンクなら比較的ハードルが低い」と内田氏。抹茶については、健康・医療分野に詳しい西沢邦浩サルタ・プレス代表取締役も「腸活や老化抑制といった世界の健康のキーワードにも合致した、手軽でおいしい素材」、伊藤園中央研究所の瀧原孝宣担当部長は「体に良い成分が濃縮された、ある意味で究極のお茶」と語る。
◇複合プログラムで成果
認知症予防をめぐり、臨床現場では「多因子介入」が関心を集めている。多くのリスク因子に総合的に対処する手法で、栄養指導、運動、脳トレーニング、生活習慣病の管理などから成る複合的なプログラムを作成・実践する。この手法に関しては、国内外の研究機関から効果を認める報告が出ている。
筑波大も2013年からMCIの人を対象に開始。登録者に週1回の頻度で参加してもらったところ、「1年間で70%以上出席した人はおおむね認知機能が保たれる一方、出席率がそれに満たない人は認知機能が下がった。脳の容積・血流なども出席率が高い人ほど保たれる傾向があった」(新井氏)という。(平満)
- 1
- 2
(2025/04/03 05:00)
【関連記事】