治療・予防 2024/12/27 05:00
センチネル外傷
~深刻な虐待につながるサイン(東京都立墨東病院 大森多恵責任部長)~
実際は音がしていないのに、音が聞こえるように感じる耳鳴り。人によっては苦痛のあまり、不眠やうつ、引きこもりにもつながりかねない。しかし、済生会宇都宮病院(宇都宮市)耳鼻咽喉科の新田清一主任診療科長は「耳鳴りは改善できる病気に変わりつつあります」と強調する。
▽脳が過度に興奮
不安や抑うつの原因になることも
人が外の音を認識できるのは、耳から入った音が鼓膜を振動させ、その振動が耳の奥にある「有毛細胞(感覚細胞)」で電気信号に変換されて脳に伝わるからだ。これまで、この有毛細胞が年齢とともに減ったり、異常を起こしたりして、難聴や耳鳴りにつながると考えられてきた。しかし、最近では脳も関わりがあるのではないかとみられている。
新田医師は「有毛細胞の障害によって、ある音域の信号が届きにくくなると、脳の聴覚中枢がそれを補おうとして異常に興奮します。この興奮によって、本来は聞こえない耳鳴りが認識されるとみられています」と説明する。実際、耳鳴り患者は難聴を合併していることが多い。
耳鳴りは全く気にならない人がいる一方、苦痛を感じる人もいる。「耳鳴りをつらく感じるかどうかは、不安や抑うつなどの働きを担う『苦痛を感じる脳』の活動の差かもしれません。耳鳴りの原因が分からないなどの不安ゆえに耳鳴りを強く意識し、ますます耳鳴りが聞こえるという悪循環に陥ってしまうこともあります」
▽補聴器で9割が改善
耳鳴りの治療の第一歩は、こうした不安を取り除くことだ。耳鳴りの仕組みや病気の経過について正しく理解するだけで不安が軽くなり、症状が改善することもある。
難聴もあるケースでは補聴器の使用が効果的だと考えられている。補聴器を使って聞こえ具合を元のレベルに近づけることで、耳からの電気信号が回復すれば、脳の異常興奮が抑えられ、耳鳴りの改善が期待できる。
補聴器を正しく使うには、機械の調整とうまく使えるようにするためのトレーニングが欠かせないため、医師や言語聴覚士などの専門家に相談することが大切だ。新田医師の患者では補聴器の利用で耳鳴りの9割に改善がみられたという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/11/19 06:00)
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