研究・論文

乳児突然死、防ぐために
待たれる原因究明

 主に1歳未満の乳児が何の予兆もなく突然死亡する乳幼児突然死症候群(SIDS)。年間100人程度がSIDSで死亡しているが、いまだ原因は分かっておらず、予防法や治療法は確立されていない。多摩北部医療センター(東京都東村山市)小児科の小保内俊雅部長は「SIDSの原因を明らかにすることは、遺族の心のケアにもつながります」と研究の重要性を強調する。

死因解明が遺族の心のケアにも

 ▽危険回避が重要

 SIDSの原因は分かっていないが、小保内部長は「生後4カ月未満の乳児に多いこと、妊娠中の喫煙や受動喫煙、人工栄養、うつぶせ寝などが危険因子となります」と説明する。こうしたことは広く知られつつあり、日本でもSIDSの発生率は年々減少している。

 SIDSを防ぐためには長時間、乳児を1人にしないようにすることが大切だ。「特に不慣れな環境では危険です」と小保内院長。乳児の行動を把握し、寝方などを直してあげることで、窒息やけがなど思わぬ事故を防ぐことができるという。

 多くの乳幼児を預かる保育園などの施設にとってもSIDS対策の重要度は増している。ただ、多くの子どもに目を配り続けるのは難しく、監視モニターなどの電子機器を設置しても、それらの有効性を疑問視する指摘もある。

 ▽研究進まぬ日本

 また、危険因子はSIDSの直接的な原因ではない。危険因子が当てはまっても大半の子どもが無事に育っている。そのためSIDSの原因を突き止め、予防法を確立するための研究が世界中で行われている。

 最近の研究では、遺伝子の機能的異常がSIDSに関係しているのではないかとの見方も出てきている。ただ、欧州ではこうした研究が進みつつあるものの、日本では規制の問題や体制の不備から十分に行われていないのが実情だという。

 SIDSの研究を進めるには、解剖による詳細なデータの集約と分析が欠かせない。しかし、小保内部長は「日本は解剖率が低く、都道府県によっても解剖件数にも大きなばらつきがあります」と話す。

 また、生後間もない乳児の突然死という悲劇に見舞われた遺族にとって解剖というのはつらい選択だ。小保内部長は「解剖でわが子に何が起きたのかが分かることで、遺族の心のケアも進むはずです」と理解を求めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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