こちら診察室 めまい・耳鳴り
めまいのリハビリ
~生活習慣も大事~ 第6回
めまいの原因はさまざまですが、耳から来る内耳性と脳などが原因の中枢性に分けられることは触れました。そこで、今回はめまいの中で最も多い、フワフワするめまいに対するリハビリテーションについて解説していきます。めまいに対するリハビリの必要性は以前より指摘されており、高齢者に対するフレイル予防の点から言われてきました。しかし、最近はより幅広い人を対象に行われ始めました。主な目的は次の三つです。
◇三つの目的
① 姿勢不安定性の減少
② 機能的バランス(動作時のバランス機能)の向上
③ 頭部運動時の視覚のブレの減少
この三つの具体的な対象疾患は、末梢(まっしょう)前庭障害(内耳障害=良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、突発性難聴後遺症、メニエール病など)と中枢性障害(脳血管障害後遺症など)になります。
このうち内耳障害で最も多い良性発作性頭位めまい症に対するリハビリの一例について説明します。頭部を効率的に動かし、三半規管内に混入した耳石を排出することを目的とします。
めまいのリハビリの一例
◇首と頭部を動かす
「Epley法」と呼ばれるこの方法は、三半規管の中の後半規管タイプに有効です。患者は長座位になり、障害側に頸(けい)部を45度旋回させ、そのまま頸部が治療テーブルの端を越えて20~30度伸展させるように患者を後方へ倒します。次に頭部を伸展したまま反対側へ回旋させ、患者を側臥(そくが)位にさせます。さらに、頭部を45度旋回させて、その状態を維持します。最後に患者をゆっくりと座らせ、頸部を軽く屈曲させます。
一連の動作は、それぞれの肢位(体のポジション)でめまいが消失するまで、または1~2分間維持します。頭の位置を変えるときは強いめまいを訴えるため、注意が必要です。もっとも多いタイプですが、有効でない場合もあります。首が痛かったり、効果が見られなかったりした場合は、無理をせずに耳鼻科専門医に相談してください。
◇眼球を動かす
二つめは、前庭機能(内耳、中枢共通)低下症に対するリハビリです。このリハビリは、「適応(Adaptation Exercise)」、「慣れ(Habituation Exercise)」、「代償(Substitution Exercise)」を基に行います。
このリハビリ法は、頭部や眼球を動かし、網膜上の像のズレを引き起こすことにより中枢神経系で適応を起こさせ、前庭系の働きを変化させることを目的とします。実際の方法は、名前などの文字が書かれたカードを用意し、カードに書かれた文字を視線を固定して見ながら、眼球、頭部、手を上下・左右に動かします。最初は眼球および頭部のみの運動から始め、最終的に頭部と手を逆方向に動かして文字を固視(じっと見る)します。
柱となるのが「Habituation Exercise」です。1980年代に、米国の神経内科医のノレー医師がめまいの起こる動作を繰り返し行うと、めまいが減少することを提唱しました。めまいが起きやすい、起き上がりや立ち上がりなどの動作を集中的に繰り返して慣れるようにします。
視線を動かすリハビリ
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