こちら診察室 めまい・耳鳴り

めまいのリハビリ
~生活習慣も大事~ 第6回

 ◇他の機能で補う

 「Substitution Exercise」は、前庭障害後に起こる機能障害を他の機能で補うことを可能にします。頸椎(けいつい)の固有受容器は、頭部運動時に前庭機能を補うことが可能です。固有受容器とは筋や関節、内耳などにあって体の位置や動きに関する情報を脳にもたらします。頸椎の固有受容器の働きを促通するには、レーザーポインターなどを頭部に取り付け、頭部の動きを視覚によりフィードバックさせることで、頭部と眼球の協調性を高めていきます。

 そのほか、歩行を動画撮影することで経時的な変化と多職種との情報共有をする「歩行リハビリテーション」や筋カトレーニング、体のバランストレーニングなどにも取り組みます。

 ◇生活上の注意点

 それでは、生活習慣ではどんなことに注意したらよいのでしょうか。順番に説明しましょう。

 【起床】

 ① 体内時計を整えるため、毎朝一定の時間に起きる。

 ② 目が覚めたらカーテンを開け、朝日を浴びる。これは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を促します。メラトニンは起床して14~16で時間に徐々に分泌され、分泌のピークを迎えると眠気を覚えます。メラトニンは光の影響を受けやすいため、朝起きて光を浴びることで分泌をコントロールすることができるのです。

 【日中の生活性向上】

 ①昼寝は1日30分以内にし、できる限り日光を浴びることや適度な運動習慣を身に付けるようにしましょう。

 ②カフェインやアルコールの摂取は適度に! アルコールは一時的に眠りを促進します。ただ、アルコールが分解されると覚醒作用をもたらし、眠りが浅くなってしまいます。ですから飲酒する時は、量を控え、寝る3時間前には飲み終えるようにしましょう。

 【眠るための準備】

 ①夕食後3時間は眠るための準備時間と考えましょう。食事中は交感神経が優位に働き、食後は胃や腸を働かせるため、副交感神経の働きが徐々に高まっていきます。交感神経が高まった状態で寝てしまうと、いくら寝ても疲れはたまったままになります。

 ②寝る前の入浴は38~40度で15分間ゆっくり漬かります。15分のうち初めの5分間は首まで漬かり、残りの10分間はみぞおち辺りまで漬かることで、副交感神経の働きが高まり、良質な睡眠に効果的です。寝る前は機敏に動かず、ゆっくりとした動作を心掛け、スマホやパソコン操作は控え脳の刺激を抑えましょう。室内の明かりを抑えた上で、呼吸方法の訓練やストレッチ、ヨガをやってみるのもよいかもしれません。

 【睡眠】

 1日7時間の睡眠時間を確保しましょう。それでも熟眠感を得られなかったり、起床時に頭痛やフラフラ感があったりした時は、睡眠時無呼吸症候群を起こしている可能性もあります。

 フワフワすることは誰にもありますが、生活に支障を来すような場合は原因を可能な限り探し出し、リハビリや生活を見直すように努めましょう。(了)

 坂田英明(さかた・ひであき)
 川越耳科学クリニック院長、埼玉医科大客員教授。元目白大学教授。日本耳鼻咽喉学会専門医、日本聴覚医学会代議員。日本小児耳鼻咽喉学会評議員。1988年埼玉医科大卒、91年帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、2005年目白大教授、15年より現職。小児難聴や耳鳴りなどの治療に積極的に取り組み、著書多数。近著に「フワフワするめまい食事でよくなる」(マキノ出版)。

  • 1
  • 2

【関連記事】


こちら診察室 めまい・耳鳴り