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目の病気の中で、日本人の成人失明原因トップの緑内障。視野に異常が出ても、初期は自覚症状がほとんどないため、病気に気付きにくい。視野の異常を自覚しないまま車の運転を続けると、交通事故につながりかねない。しかし、東京大学医学部付属病院(東京都文京区)眼科の朝岡亮特任講師らの研究では、多くの患者は視野異常を自覚することで事故の発生が抑止されていることが分かった。
視野異常と交通事故との関係
▽気付かず手遅れになることも
緑内障は、40代以降の約20人に1人が発症する。何らかの原因で視神経に障害が起こり、目で捉えた映像がうまく脳に伝わらず、徐々に視野が狭くなる。左右の目で欠損部分が異なり、視野を補い合うため、初期には自覚しにくく、気付いた時には手遅れというケースも多いという。
緑内障で視野が狭まると、交差点を渡る人が見えない、対向車が見えにくい、左右から進入してくる車が見えないなど、運転に支障が出る可能性がある。
そこで朝岡特任講師は慶応義塾大学医学部眼科の結城賢弥専任講師と共同で、緑内障患者約200人を3年間追跡し、交通事故との関係を調査した。その結果、事故を起こした人が4.9%いたが、視野欠損の度合い(重症度)との直接の相関は見られず、視野異常が重症な人ほど車の運転が慎重になる傾向が強かった。「緑内障の患者さんは、視野が欠けていることを理解しているため、多くの人が慎重に運転します。事故は視野の問題だけでなく、さまざまな因子が絡み合って起きていると推測され、視野欠損と事故リスクの増加との関係は単純ではありません」と朝岡特任講師。
▽40歳を超えたら検診を
この数年、高齢者が加害者となる交通事故が目立ち、社会問題となる中で、高齢者の運転免許の是非は、社会全体で議論すべき重大なテーマとなっている。だが、車がないと生活できない地域が存在し、特に高齢者にとっては重要な移動手段の一つである。
朝岡特任講師は「視野が欠ける範囲が2倍になったからといって、交通事故が2倍に増えるという決め付けは危険です。過疎地に住む高齢者や職業運転者の運転免許を取り上げてしまったら、移動や仕事に困ることになります。むしろ緑内障患者の多くが、未治療であることの方が問題です」と指摘する。
視野異常がある場合、患者本人が自覚しているか否かによって、日常生活への影響は大きく異なる。そのため、朝岡特任講師は「緑内障は薬物治療や手術により進行を抑えられるので、早期発見、早期治療が重要です。40歳を超えたら、年に1度は検診を受けてください」と訴える。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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