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甲状腺は喉の下方にあるチョウが羽を広げたような形をした臓器で、エネルギー代謝に関わる甲状腺ホルモンを作っている。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン値は正常範囲なのに甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値が高い状態を指し、妊婦などの場合は治療が必要になる。
人間ドックなどで偶然発見され、指摘されるケースが多い
▽正常値でも安心は禁物
甲状腺ホルモンは脳下垂体から出されるTSHにより分泌がコントロールされている。潜在性甲状腺機能低下症とは、「甲状腺ホルモンの分泌機能が低下し、脳下垂体が必死にTSHを分泌して、甲状腺ホルモン値を正常に保っている状態です」と、甲状腺のクリニック若松河田(東京都新宿区)の磯崎収院長と木村寛也理事長は説明する。
磯崎院長によると、潜在性甲状腺機能低下症は人口の約4~10%の人に見られ、女性に多く、高齢になるほど頻度は高まる。木村理事長も「自覚症状が無く、本人も気付かず、人間ドックなどの検査で偶然見つかることが大半です」と話す。
磯崎院長は「甲状腺ホルモン値が正常なので問題がなさそうに見えますが、甲状腺ホルモンの低下で起こるLDLコレステロールの上昇や、脳梗塞、心筋梗塞などの病気が、潜在性の場合でも多いことが分かっています」と指摘する。食生活や運動不足が原因と捉えられがちなLDLコレステロールの上昇が、実は甲状腺機能の低下によるものかもしれないのだ。
▽経過観察か服薬治療
原因は幾つかあるが、一番多いのが慢性的に甲状腺に炎症が起こり甲状腺の働きが悪くなる「橋本病」だ。そのため検査では、血液を採取して血中のTSHと甲状腺ホルモンの濃度を測定し、併せて橋本病の原因となる抗体の有無も調べる。
治療は患者ごとに異なる。妊娠を希望する女性や妊婦では、甲状腺ホルモンが低下すると不妊や流産のリスクが高まり、胎児の発育にも影響が出るので、すぐに治療を開始する。それ以外の場合は一過性の可能性も考慮し、1~3カ月後に再検査をして、TSHが一定数値以上なら治療対象となる。治療する場合は、甲状腺ホルモンを飲み薬で補充する。もともと血中にある物質なので、副作用は極めて少ないという。
木村理事長は「潜在性甲状腺機能低下症は、自分で機会をつくって検査をしないと分かりません。甲状腺は全身に影響を及ぼす臓器なので、ぜひ定期的に検査を受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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