治療・予防

繰り返すと痔ろうにも―肛門周囲膿瘍
乳児のお尻トラブル

 生後1カ月から1歳くらいの乳児は肛門周囲の皮膚の下にうみがたまることがあり、「肛門周囲膿瘍(のうよう)」と呼ばれている。再発を繰り返すと膿瘍が皮膚表面とつながり、皮膚に穴が開く「乳児痔ろう」に進展する。近畿大学医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)外科の佐々木隆士准教授は「乳児の痔ろうは珍しくありませんが、まれに手術が必要になる場合があります」と指摘する。

自然に治ることが多いが、まれに手術に至ることも

 ▽大半は男児

 肛門周囲膿瘍は、下痢や軟便が続いた後に肛門周辺が赤く腫れ、うみのたまった白いできものが表れる。男児によく発症し、女児に見られることはめったにない。排便時に痛むため、乳児は不機嫌になったり泣いたりする。

 膿瘍が破れると皮膚の表面からうみが出るようになり、再発を繰り返すと、膿瘍が悪化し、皮膚表面と直腸の間に瘻孔(ろうこう)と呼ばれる穴が開く乳児痔ろうに至る。乳児痔ろうでは強い炎症を起こすことは少なく、痛みもあまりないが、瘻孔から白いうみが少しずつ出続ける。肛門周囲膿瘍を発症する時期が遅いほど治りにくく、乳児痔ろうに発展する傾向があるという。

 肛門周囲膿瘍の原因は二つ。一つは、直腸と肛門の境にある小さなくぼみに入り込んだ便に含まれる細菌が感染し、肛門周囲が腫れるもの。もう一つは、便が肛門周辺に付着したまま長時間経過した結果、おむつかぶれが悪化して、皮膚内で細菌が増殖することによるものだ。下痢や軟便が続いたときに発症しやすい。

 ▽薬での早期治療が理想

 肛門周囲膿瘍、乳児痔ろうの治療はともに、抗菌薬や漢方薬を内服して炎症を抑え、うみがたまるのを防ぐ。下痢は症状を悪化させるため、整腸薬を使用して便の状態を整える。まめにおむつを換え、肛門周辺を清潔に保つことも必要だ。

 うみがたまり皮膚が破れそうになっていれば、切開によりうみを出す。2歳を過ぎても治らない場合には、瘻孔を切除する手術を行う。また、なかなか治らない場合や年長児で発症した痔ろうの場合は、クローン病など他の病気が原因となっていることもあるため、詳しい検査が必要となる。

 「大人の痔ろうは手術をしなければ治りませんが、乳児の痔ろうではほとんどが1歳半ごろまでに自然に治ります。最近は漢方薬を使うことで、抗菌薬投与や切開排膿、最終的に手術が必要となるケースは減っています」と佐々木准教授。

 「肛門周辺が赤く腫れている、できものがあるなどの場合は、小児外科を受診してください。痔ろうに至る前に治すことが望ましいので、早期に治療を始めることが大切です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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