インタビュー

共通土台で研究、薬剤開発にも期待
ゲーム依存症をWHO認定
-専門医・樋口進氏に聞く-

 世界保健機関(WHO)が5月の総会でゲーム障害を依存症に認定した。適用は2022年からになるが、医療の現場でどのような変化が期待できるのか。11年にインターネット依存の外来診療を始め、オンライン・ゲームが大半を占めるネット依存症を数多く診てきた国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長に診療現場での新たな取り組み、今後の課題などについて聞いた。

インタビューに応える樋口進院長

 ◇マンパワーの育成不可欠

 --ゲーム依存症の認定がない中での診療の難しさは

 ゲーム依存の診察は「その他の習慣および衝動の障害」という病名を適用し、保険診療しているが、病名にはゲームのゲの字も出てこないため、ゲーム依存症としての診療、研究に難しさはある。病気が定義され、治療ガイドラインが出てくれば共通の土台で研究できる。治療も進む。病名や概念がない今の状況とはまったく違ってくる。

 --診療体制も変わる。

 学校や家庭でネットゲームに依存している子どもや若者がいても、現状では誰に相談していいか分からないし、(窓口とされている)保健所とか精神保健福祉センターに相談しても専門家がいない。相談体制とマンパワーの育成が絶対に必要だ。

 医療の側も遅れている。専門的にネットゲームの依存症患者を診るわれわれのようなところは少なく、一般の小児科にゲーム依存や依存予備軍が多数来ているが、医師は患者の診療に難渋している。治療経験も少ないため、「どうしてよいか分からない」「早くしっかりしたマニュアルを作ってほしい」とおっしゃっている。

 こうした現状が変わると期待したい。

 ゲーム依存症が病名として認められると診療報酬の仕組みも変わり、「手を挙げる先生」も多くなる。医学部でも教育してくれるのでしょうから、全然違います。今、患者さんはたくさんいます。

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