インタビュー

共通土台で研究、薬剤開発にも期待
ゲーム依存症をWHO認定
-専門医・樋口進氏に聞く-

 ◇行動依存の治療薬

 --現在実施している具体的な施策は。

 4年くらい前からここで、医療者向けと教育者向けのインターネット依存症の研修会を行っている。受講希望者が多すぎて、医療関係は今年から年2回に増やす。それでも足りない。また、相談を受ける方々、保健所などで働く方向けの研修を始められたらいい。

 --飲酒欲求を抑えるオピオイド受容体拮抗薬=用語解説=が認可された。この薬をゲーム依存に使う可能性は。

 アルコールや麻薬のように薬物による作用を受けないで起きる行動習癖に関する治療薬は世界に一つもない。しかし、ギャンブル依存ではいくつか研究されており、一番有効性が高いのがオピオイド受容体拮抗薬。行動依存のギャンブルで効果があるのなら、ゲームでも効果があると思う。治験をやってみないと分からないが、飲酒欲求を抑える減酒薬のオピオイド受容体拮抗薬は候補の一つだと思う。

携帯ゲーム機に熱中する少年(イメージ。本文とは関係がありません)

携帯ゲーム機に熱中する少年(イメージ。本文とは関係がありません)

 --日本で開発される可能性は

 ギャンブルやゲームに適用拡大できるように考えてほしい。治験には莫大(ばくだい)な費用がかかるがギャンブルもゲームも治療薬があれば市場として小さくはない、薬を開発すればペイすると思うのだが、なかなか前に進んでくれない。

 ◇難しい子どもの治療

 フィンランドでオピオイド受容体拮抗薬を鼻にスプレーするギャンブル治療薬の開発が進められている。副作用がなくて問題もなければ、薬として出てくる可能性がある。この製薬会社に「日本で治験をしてほしい」と言ったが、「まずはヨーロッパで」ということだった。

 ギャンブル等依存症対策基本法の推進計画の中に、薬物治療の開発に関して前に進めると書いてある。国も治療をよくしたいと考えており、ギャンブルやゲーム依存の治療薬が開発される可能性はある。

 中学生、小学生にゲーム依存症は多いが、子どもは大人に比べて治療が難しい。大人はある程度状況が分かっていて、自分が何をしなくてはいけないか、どんな問題を起こしたか分かるが、子どもは分からない。アドバイスも難しい。薬である程度、ゲームをやりたいという気持ちが抑えられれば、治療しやすくなる。

【用語解説】オピオイド受容体拮抗薬
 脳内の中枢神経系などにあるオピオイド(麻薬類、麻薬性鎮痛薬)受容体に作用してアルコール摂取量などを低減する効果がある薬剤。中枢神経系に作用するため、アルコールなどの薬物だけでなく、ギャンブルやゲーム依存の治療薬としても期待されている。(聞き手 解説委員・舟橋良治)

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