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脳の血管が詰まり、酸素や栄養が届かなくなって脳細胞が壊死(えし)する脳梗塞。発症直後の治療として、太ももの付け根の血管から細い管(カテーテル)を脳まで通して操作し、詰まった血の塊(血栓)を取り除く「血栓回収療法」が注目されている。聖マリアンナ医科大学東横病院(川崎市)脳神経・脳卒中センターの植田敏浩センター長に話を聞いた。
発症直後の脳梗塞の治療法
▽発症から8時間以内に実施
脳梗塞は、脳の血管の異常で生じる脳卒中の一種で、国内では年間約6万2000人が死亡している。発症直後に、詰まった血栓を溶かす「tPA(組織プラスミノゲン活性化因子)」という点滴薬が以前から使われているが、投与開始時間は発症後4.5時間以内までという決まりがある。植田センター長によると、「自立した生活を送れるまでに回復する人は約3割にとどまる」といった限界も見えてきたという。
そうした中、血管を内側から広げる「ステント型」の血栓回収専用カテーテルを脳血管に通し、先端の網目状の部分で血栓を絡め取って血流を再開させる血栓回収療法が新しい治療法として期待されている。
「発症から原則8時間以内であれば治療ができます。一般的にはtPAを点滴した後に行いますが、規定の時間を過ぎているなどの理由でtPAが使用できない場合は、すぐにこの治療を開始します。5~6割の人は退院後に自立した生活が可能です」と植田センター長。
一方で、カテーテルで脳血管を傷つけたり、壊死した細胞に血流が再開したりすると出血する恐れがあるため、細心の注意が必要だという。
▽普及に課題も
血栓回収療法にはカテーテルの細かい操作など高度な技術が必要なため、治療ができる医師は不足しており、普及に向けた課題となっている。病院や専門医の地域偏在も起きている。植田センター長は「24時間、365日対応するには、ある程度の数の専門医が必要です。専門医が少ない現状では、血栓回収療法を実施する病院を地域ごとに集約し、治療の適応になる患者をスムーズに搬送することが必要になるでしょう」と指摘する。
2018年12月には「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、患者の居住地域にかかわらず、適切な医療を受けられるようにすることが定められた。今後、各地域の病院数などに応じた救急搬送システムの構築が期待される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/07/03 16:30)
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