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比較的軽い傷やあざ(皮膚損傷)のうち、深刻な虐待につながる恐れのあるものを「センチネル外傷」という。センチネルとは、警戒や監視をする見張り役の兵士を意味し、状況が悪化することを防ぐために、センチネル外傷を発見した時点での介入が重要だ。東京都立墨東病院(東京都墨田区)小児科の大森多恵責任部長に聞いた。
TEN―4―FACESpで示されている部位や皮膚損傷
◇受傷部位と年齢が鍵
2013年に発表された米国の研究によると、死亡事例を含む身体的虐待を受けた乳児の27.5%に過去、センチネル外傷が確認されており、その大半が生後7カ月以内だったという。
センチネル外傷は比較的軽微なものが多く、偶発的にできた傷との区別が難しい。大森責任部長によれば、区別する鍵は月齢、傷の場所、傷の数の三つ。自力での移動が難しい月齢(おおむね6カ月未満)の乳児が偶然傷を負うケースはごくまれで「この月齢で生まれつきではない、ぶつけたようなあざがある場合は注意が必要です」。
虐待による傷は胸や背中、腹、尻など衣服や髪に隠れて見えない場所が多く、耳、頬、下顎角(かがくかく、いわゆるえら)、首などにも多く見られる。
「例えば、顔面を平手打ちされた時にできやすい頬や耳の他、泣いている子どもの口を強い力で押さえると下顎角にあざができることがあります。1カ所に集中した複数のあざも虐待を示唆する重要な特徴です」
◇園の協力も重要
近年は、皮膚の損傷から4歳未満の虐待を見分けるスクリーニングツールができた。主な受傷部位の頭文字を取って「TEN―4―FACESp」と言い、虐待による可能性が高い場所が示されている。特に4カ月以下の乳児の皮膚損傷については、どの部位であっても注意を促している。「乳児期の子どもに接する機会が多い保育園などの関係者には、虐待が疑われる皮膚損傷の特徴をぜひ知っておいてほしい」
同時に、虐待がエスカレートする前に、親子を適切なサポートにつなげる重要性も指摘する。センチネル外傷に気付いても児童相談所へ通報するのを迷う場合は、園医に相談したり、虐待対応のできる地域の基幹病院に紹介するなど、何らかの行動を取ってほしいという。「早期に適切なサポートとつながれば、問題が深刻化する前に親子を救うことができます」
現在、育児に強い不安や困難感を抱えている親には「一人で頑張り過ぎず、かかりつけの小児科などに気軽に相談してください。あなたは決して一人ではありません」と大森責任部長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです
(2024/12/27 05:00)
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